2016年4月4日
生誕100年 木下忠司の映画音楽
東京国立近代美術館フィルムセンター 主任研究員 冨田美香
木下忠司の映画音楽,と聞いて,メロディーが浮かぶ人はどのくらいいるでしょうか。
戦後の日本映画をよく御覧になっている方は,兄の木下惠介監督作品の『喜びも悲しみも幾歳月』のマーチ風主題歌「おーいら,みーさきのー,灯台もーりぃはー♪」や,『お嬢さん乾杯』のワルツ調の主題歌「昨日町で会っーたー,かわい娘さーんの♪」が,つい口をついてでることでしょう。テレビ好きの方でしたら,時代劇の「水戸黄門」シリーズの勇ましい主題歌や「特捜最前線」の音楽,アニメ「カリメロ」の可愛らしい主題歌を口ずさむかもしれません。
フィルムセンターの「生誕100年 木下忠司の映画音楽」では,多様な分野で人々の心に残る音楽を作り続けてきた木下忠司に焦点をあて,彼が音楽を担当した映画を中心に,72作品を上映します。

木下忠司と木下惠介
驚くことに,木下忠司は1946年から1988年までの間に,480本以上の映画作品の音楽を手がけました。日本の映画音楽家では最多の作品数といってよいでしょう。
木下忠司は,木下惠介監督や妹の脚本家・楠田芳子の作品のイメージが強い映画音楽家ですが,彼の作品リストを見てみると,1961年には,主な映画会社各社の作品を担当し,コメディからサスペンス,ラブロマンス,社会派ドラマ,時代劇まで,あらゆるジャンルの作品をなんと30本以上も手がけています。月2,3本のハイ・ペースで映画音楽を作っていた1950年代から1960年代は,日本映画史上の代表的な監督や作品群だけでなく,多くの娯楽作品をもたくさん含んでいます。「映画が好きで映画しかなかった」という木下忠司は,その一本一本の作品について,主題や情感,登場人物の感情を,より豊かに伝える音楽を丁寧に作っていました。

『破れ太鼓』(1949,©松竹株式会社,木下惠介)の木下忠司
今回の特集は,「僕は作曲家ではなく映画音楽家です」という木下忠司が,戦後の日本映画の黄金時代を映画音楽の面から作り上げたことを発見する企画でもあります。映画のジャンルをこえて,恋愛感情や親子愛,哀しい別れや人情を奏でる抒情的な音楽から,貧しい生活の中でも希望を失わず懸命に明るく生きる主人公に寄り添う優しく・明るい音楽,そして困難に強く立ち向かう人々を謳うマーチ調の音楽,地域性や風土を色づける音楽など,映画音楽の魅力をお楽しみいただけます。
木下忠司が4月9日(土)に満100歳を迎える記念の年に,その映画音楽の世界を御堪能ください。
- 企画名
- 生誕100年 木下忠司の映画音楽
- 開催期間
- 4月5日(火)~6月12日(日)
- 観覧料
- 一般520円,大学生・高校生・シニア310円,小・中学生100円 /障害者(付添人は原則1名まで),キャンパスメンバーズは無料
東京国立近代美術館フィルムセンター
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