2016年5月16日
MIYAKE ISSEY展 : 三宅一生の仕事
国立新美術館主任研究員 本橋弥生

国立新美術館「MIYAKE ISSEY展 : 三宅一生の仕事」 展示風景
撮影:吉村昌也
胸が躍りだすほど楽しくて,着心地の良い服を生み出すデザイナー,三宅一生。東京に事務所を立ち上げた1970年以降,三宅は私たちの日常生活に躍動感を与える,快適で革新的な服づくりを展開してきました。本展は,世界を舞台に活躍するデザイナー・三宅一生の初期から現在に至る約半世紀にわたる仕事を紹介する,初めての試みとなります。
常に次の時代を見据えながら,新しい服づくりの方法や可能性を果敢に追求する姿勢――それは,1960年に日本で開催された世界デザイン会議において,当時,大学生であった三宅が,そこに衣服デザインが含まれないことに疑問を持ち,質問状を送ったことに始まります。大学卒業後,パリに渡り1968年には五月革命に遭遇した三宅は,若者たちによる熱い抗議運動を目の当たりにし,ジーンズやTシャツのように多くの人に身近な衣服をつくることを決心します。以来,既成の枠にとらわれない自由な発想のもと,独自の素材づくりから始まる衣服を探求してきました。
本展では三宅の仕事を大きく三つに分けて紹介しています。
セクションAでは1970年代の作品を展示しています。高度経済成長を経て,女性が社会に進出し始めたこの時代から,三宅は西洋の衣服とは異なる「一枚の布」という独自のコンセプトを掲げ,一枚の布をできるだけそのままに,いかにして身体の動きに呼応する衣服をつくるのかという問いを探求してきました。以来,古来の技法と最先端技術の融合や独自の素材開発,様々な専門家との協働も三宅の比類なき活動を支えています。
セクションBでは1980年代初頭に展開された「ボディ」のシリーズを展示しています。身体の動きとフォルムをさらに突き詰めた三宅は,胴体部を繊維強化プラスティックやラタンなど従来の衣服には用いられない硬い素材によって覆う衣服を発表しました。《ラタン・ボディ》(1980年)はアメリカの美術誌『Artforum』の表紙を飾った初めての衣服でもあります。
セクションCでは三宅の服づくりの革新的な側面を「素材」,「プリーツ」,「IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE」,「A-POC」,「132 5. ISSEY MIYAKE」と「陰翳(いんえい) IN-EI ISSEY MIYAKE」という5つのテーマに分けて紹介しています。さらに,プリーツマシーンの展示や実演,132 5. ISSEY MIYAKEの1/2サイズモデルの体験コーナーや映像なども展示しています。
ものづくりに対する三宅のデザインアプローチを明らかにし,未来に向けた更なる創作の可能性を探る本展は,子供から大人まで創作することの楽しさに触れ,自由な発想を押し広げる絶好の場となっています。

左:ISSEY MIYAKE《フライング・ソーサー Spring/Summer 1994》1993年
撮影:宇戸浩二
右:132 5. ISSEY MIYAKE《No. 10 スカート》2010年
撮影:宇戸浩二

ISSEY MIYAKE《コロンブ Spring/Summer 1991》1990年
撮影:岩崎寛
国立新美術館
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※高校生,18歳未満の方(学生証又は年齢のわかるものが必要)及び障害者手帳を御持参の方(付添いの方1名を含む)は入場無料
※5月18日(水)は「国際博物館の日」につき入場無料 - ホームページ
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http://2016.miyakeissey.org