2016年10月7日
特別展「革新の工芸―“伝統と前衛”、そして現代―」
東京国立近代美術館 工芸課 主任研究員・諸山正則
戦後の日本では,工芸の近代化を牽引し基盤の形成に尽力した富本憲吉や松田権六等の先駆者たちがその道筋を切り拓き,彼らに続きいわゆる伝統の工芸や前衛的な作家たちが,伝統の中の革新を基軸として,その制作や作家的姿勢を対峙させつつ相互に新たな歴史をつくり発展を達成しています。国の無形文化財制度に沿った伝統の表現としての工芸は,伝承のわざと美を踏まえ,現代的な感覚を発揮して時代に即した用の美を連綿と創造してきました。また前衛的な造形は,日本や世界の美術動向と連動しつつ,工芸的素材や技術,日本の美質を踏まえて造形表現の可能性を広げてきました。今日それらのわざと芸術の表現を新たな感覚で吸収し台頭した世代は,源泉となった過去を現代の視点で振り返りつつ現代の表現として標準的に認識し,新たな芸術の革新を推し進めています。それは,国内にとどまらず,日本工芸の風土的で特異な美しさが国際的な注目を集めています。
十四代今泉今右衛門 《色絵雪花墨色墨はじき菊文花瓶》
2014年 個人蔵
本展覧会は,「工芸の時代の先駆者」と,伝統の岡部嶺男や増村益城,宮田宏平,前衛オブジェの八木一夫や染織造形の高木敏子ら「“伝統と前衛”の革新」,三輪和彦や今泉今右衛門,室瀬和美,大角幸枝ら,各々が継承した伝統を踏まえ今日的な造形表現を創作して革新を図る「伝統の現代」,そして陶磁の金重晃介や八木明,松本ヒデオ,漆芸の栗本夏樹や松島さくら子,金工の橋本真之,染織の草間喆雄や林辺正子ら,独自の素材と伝統のわざの認識や個性的な造形表現に対する感性をもって現代の工芸を革新する「現代の造形」の4章で構成しています。世界に冠たる日本の芸術を紹介します。
草間喆雄 《The Flow》
2013年 個人蔵
陶磁,漆芸,金工を中心に,戦後の工芸及び現代の工芸を代表する83名を取り上げ,約120点の重要な作品を展示します。日本工芸の現代の特質と造形の美に着目し,そこにある伝統と現代の造形を常に革新し新たな創造としてきている工芸を一堂にして,その将来を展望します。
東京国立近代美術館工芸館
(住所)〒102-0091
東京都千代田区北の丸公園1-1
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋」駅 1b出口徒歩8分
東京メトロ東西線,半蔵門線,都営新宿線「九段下」駅 2番出口徒歩12分 - 開館時間
- 10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(9/19,10/10は開館),9/20(火),10/11(火)
- 観覧料
- 一般¥550, 大学生¥350,
高校生以下及び18歳未満,障害者手帳をお持ちの方とその付添い者(1名)は無料。
11/3(木・祝)文化の日は無料観覧日 - ホームページ
- http://www.momat.go.jp