2017年2月3日
「マルセル・ブロイヤーの家具:
Improvement for good」
東京国立近代美術館 工芸課 主任研究員 北村仁美
マルセル・ブロイヤー(1902~81)は,パリのユネスコ本部やニューヨークの旧ホイットニー美術館(現・メトロポリタン美術館分館)など,公共施設や美術館などの大型建築のプロジェクトにかかわった建築家として知られています。しかし,モダニズムの父のひとりと称される彼の華々しいキャリアの原点は,初期の家具デザインに見ることができます。

《ネストテーブル B9-9c》
1929年
東京国立近代美術館蔵
ブロイヤーのデザインに対する考えは,工芸や産業,アートの融合を目指し,数々のモダンデザイナーを輩出したバウハウスで培われました。生活の中での使いやすさをコンセプトに置き,現代の価値観にも合うような合理的なデザインで知られています。
木製家具からスタートし,スティールパイプへ移行したバウハウス時代,アルミや合板など新しい素材と構造を見いだしたスイス・イギリス時代,建築家として活躍したアメリカ時代など,展覧会では,ブロイヤーの生涯とともに,モダンデザインの考えに貫かれた彼の代表作を紹介します。

《クラブチェア B3》
1927-28年
東京国立近代美術館蔵
ブロイヤーの代表作とされる《クラブチェア B3》,通称「ワシリーチェア」は,1925年,ブロイヤー23歳のときに考案されました。たっぷりとしたクッションや大仰な布張りのような,それまでの重々しい椅子のイメージを一新したデザインは,人々の注目を集めました。自転車の構造から着想したといわれる鉄パイプによる構造は,熔接して作られた初期のタイプから,やがて量産や座り心地を求めてビス留めの構造に改良されていきます。また,アルミニウム,ジュラルミンなど,意欲的に様々な素材での制作が試みられました。進化を続けた複数のバージョンのうち,それぞれタイプの異なる日本国内所蔵の4コレクションが,本展で初めて一堂に会します。

《クラブチェア B3》(部分)
1927-28年
東京国立近代美術館蔵
また,修復後初公開となるバウハウス時代の作品のほか,B3の組立て工程を映像で紹介したり,実際に座れるモデルの紹介があったりなど,ブロイヤーのデザインを体感できる多角的な展示も試みます。
モダンデザインという言葉に様々な解釈の可能性を示しているブロイヤーのデザインに改めて触れ,21世紀に生きる私たちに送られた彼のメッセージを受け取る機会になれば幸いです。
東京国立近代美術館
(住所)〒103-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋駅」 1b出口より徒歩3分
- 開館時間
- 火曜日~木曜日,日曜日 10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
毎週金曜日,土曜日は20:00閉館 - 休館日
- 毎週月曜日,(3月20日,27日,4月3日,5月1日は開館),3月21日(火)
- 観覧料
- 一般¥430,大学生¥130,高校生以下及び18歳未満,65歳以上は無料
※3月5日(日),4月2日(日),5月7日(日)は無料観覧日 - ホームページ
- http://www.momat.go.jp