2017年5月12日
ライアン・ガンダー ―この翼は飛ぶためのものではない
国立国際美術館 主任研究員 中西 博之
ライアン・ガンダーは,1976年イギリスに生まれ,母国とオランダで美術を学び,2000年代初頭から世界各地で個展を開催するとともに,『ドクメンタ』や『横浜トリエンナーレ』など著名な展覧会にも参加してきました。この芸術家の仕事は,美術作品や普段の生活で遭遇する物事を素材として,オブジェ,インスタレーション,絵画,写真,映像,印刷物などを制作するもので,多彩であり既成の型にはまっていません。

ライアン・ガンダー《あの最高傑作の女性版》2016年
©Ryan Gander, Courtesy of Lisson Gallery
ガンダーの芸術観は,作品だけではなく,作品にまつわる思考をも重視する点に特徴があり,作品は,鑑賞者の想像力を活性化し,新たな思考回路を生み出し,物事の認識を拡張してくれます。制作の背後には,美術全般についての考察,見ることについての洞察,日常経験の分析など,知的な思考が満ちています。手法は,意外なものの結合,架空の状況の設定,情報の部分的な隠蔽,ユーモアの導入,過去と未来への誘導など,一風変わっているようでありながら,理にかない示唆に富んでいます。

ライアン・ガンダー《リアリティ・プロデューサー
(構造と安定のための演劇的枠組み)》2017年
©Ryan Gander, Courtesy of TARO NASU
本展は,新しいコンセプチュアル・アートの旗手と目される芸術家ライアン・ガンダーの重要作と新作約60点による個展です。タイトル『この翼は飛ぶためのものではない』が謎めいているように,展覧会は未知の世界へ誘ってくれるでしょう。同時にガンダーの企画による『ライアン・ガンダーによる所蔵作品展 - かつてない素晴らしい物語』展も開催します。比較して考えるという人間の本能的な能力を前提にして,所蔵品を多数のペアとして紹介しますが,類似に基づきながらも制作場所や制作時期,素材や様式,そして作者の持論や信条などが異なる組合せであるため,コレクションを鑑賞する新鮮な観点を提供してくれるでしょう。ペアのキーワードは,思春期・連想・輪・署名・地図・グリッド・脚がない・高台など,多種多様です。全館を使用する今回の展覧会は,私たちに視覚芸術の可能性を実感させてくれるに違いありません。

ライアン・ガンダー《アンパーサンド》2012年
©Ryan Gander, Courtesy of TARO NASU
石川コレクション,岡山
国立国際美術館
(住所)〒530-0005
大阪市北区中之島4-2-55
- 問合せ
- 06-6447-4680
- 交通
- 京阪電車中之島線「渡辺橋駅」(2番出口)から南西へ徒歩約5分
地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」(3番出口)から西へ徒歩約10分
JR「大阪駅」,阪急電車「梅田駅」から南西へ徒歩約20分
JR大阪環状線「福島駅」,東西線「新福島駅」(2番出口)から南へ徒歩約10分,阪神電車「福島駅」(3番出口)から南へ徒歩約10分
地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」,京阪電車「淀屋橋駅」(7番出口)から西へ徒歩約15分
市バス「大阪駅前」から,53号・57号系統で,「田蓑橋」下車,南西へ徒歩約3分 - 開館時間
- 火曜日~木曜日,日曜日 10:00~17:00
毎週金・土曜日は20:00閉館(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日〔ただし,5月1日(月)は開館〕
- 観覧料
- 一般900円(600円)夜間割引700円,大学生500円(250円)夜間割引400円,( )内は20名以上の団体料金,夜間割引は毎週金・土曜日の17:00以降
高校生以下,18歳未満無料
心身に障がいのある方とその付添い者1名無料(証明できるものを御提示願います)
●本料金で「ライアン・ガンダーによる所蔵作品展-かつてない素晴らしい物語」も御覧いただけます。 - ホームページ
- http://www.nmao.go.jp/
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