2017年6月6日
「映画プロデューサー 佐々木史朗」
東京国立近代美術館フィルムセンター 主任研究員 冨田美香
「映画プロデューサー 佐々木史朗」は,フィルムセンターでは初めての「映画プロデューサー」に焦点をあてた上映企画です。

佐々木史朗
佐々木史朗(1939年生)は,2015年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞した『岸辺の旅』(2015年,黒沢清)など,自らの会社オフィス・シロウズを拠点に映画を製作している現役の映画プロデューサーです。通常,映画人の特集上映では,監督や脚本家,キャメラマンや美術監督,俳優や映画音楽家を対象に,その人の個性や作家性,活動の全容を捉えながら,それぞれの作品の魅力を味わう楽しみがありますが,「映画プロデューサー 佐々木史朗」では,それらの楽しみはもちろん,佐々木史朗という映画プロデューサーが,その飄々とした歩みの中で,一貫して若い才能ある監督たちを続々と世に出し,日本の映画界に変革のうねりをおこしていったダイナミズムも感じとる,そんな醍醐味もあります。

『ヒポクラテスたち』(1980年,シネマハウト=ATG,大森一樹)
佐々木がおこした“変革のうねり”は,芸術的な映画を製作,上映していた日本アートシアター・ギルド(ATG)の社長に就任した1979年に始まります。佐々木は,自主映画や学生映画の世界で活躍していた20代の監督たちや,ピンク映画やロマンポルノで注目されていた若手監督たちに,一般劇場用映画を撮る機会を次々と作り,それまでの日本映画とは描く主題もスタイルも異なる,個性的な新人監督と作品群を続々と世に送り出したのです。佐々木のこの姿勢は,ATG退社後も一貫してブレません。40年近くにわたって若い才能と向き合い,その作家の個性を遺憾なく発揮できるよう,そしてその作家を伸ばしていけるよう,独立系映画プロデューサーの歩みを貫いているのです。

『人魚伝説』
(1984年,ディレクターズ・カンパニー=ATG,池田敏春)
今回の特集では,佐々木がプロデュースした50本以上の作品から,佐々木自身が悩みに悩んで絞り込んだ18人の監督の作品を上映します。映画プロデューサーデビュー作の『星空のマリオネット』(1978年,橋浦方人)や,美しく哀しくかつ凄まじい愛と復讐の物語の『人魚伝説』(1984年,池田敏春)など,今までフィルムで鑑賞できる機会の少なかった作品から,『遠雷』(1981年,根岸吉太郎)や『キツツキと雨』(2012年,沖田修一)なども美しいニュープリントで御堪能いただけます。大スクリーンで「映画プロデューサー 佐々木史朗」の世界をお楽しみください。

「キツツキと雨」©2011「キツツキと雨」製作委員会
東京国立近代美術館フィルムセンター
(住所)〒104-0031 東京都中央区京橋3-7-6
- お問合せ
- 03-5777-8600
- 交通
- 東京メトロ 銀座線京橋駅下車 出口1から昭和通り方向へ徒歩1分
都営地下鉄 浅草線宝町駅下車 出口A4から中央通り方向へ徒歩1分
東京メトロ 有楽町線銀座一丁目下車 出口7より徒歩5分
JR東京駅下車 八重洲南口より徒歩10分 - 休館日
- 毎週月曜日
- 会場
- 大ホール
- 観覧料
-
一般520円,大学生・高校生・シニア310円,小・中学生100円,障害者(付添者は原則1名まで)・キャンパスメンバーズは無料
※学生,シニア(65歳以上),障害者,キャンパスメンバーズの方は,
証明できるものを御提示ください。 - ホームページ
- 東京国立近代美術館ホームページ