2017年8月7日
絹谷幸二 色彩とイメージの旅
京都国立近代美術館 研究員 平井啓修
「鮮烈な色彩と多様なイメージ」
絹谷幸二の作品を見た第一印象は,このような言葉に集約されるでしょう。しかし,一つ一つじっくりと作品を見ていくと,ただ鮮やかなだけではない複雑な色合いや現代的な造形感覚,さらには作品に込められた作家の想いを感じることができます。絹谷は日本の美術界の第一線で活躍し,精力的な活動を続けるアフレスコ作家です。
アフレスコとは一般的にフレスコ画と呼ばれるもののことで,英語ではfrescoとなります。しかし,イタリア語でfrescoは英語のfresh,日本語では「新鮮」という意味になり,絵画である「フレスコ」を指すイタリア語はaffrescoとなるため,本場イタリアで学んだこの作家は,フレスコ画をアフレスコと呼んでいます。
絹谷が壁画の魅力に引き込まれたのは,大学の研究旅行で法隆寺の金堂壁画を見た時のことでした。金堂壁画は1949年に火災に遭い,大きなダメージを受けましたが,それでもなお一部の色彩や輪郭線が残っており,壁画の圧倒的な力強さに絹谷は感銘を受けました。大学では小磯良平教室で油彩画を学んでいましたが,大学院進学時に壁画を専攻するようになり,1971年にはイタリアのヴェネツィア・アカデミアへ留学して,アフレスコと向き合う日々を過ごしました。
絹谷幸二 《蒼の間隙》 1966年
大学の卒業制作《蒼の間隙》では,青みを帯びた沈んだ色調の空間に,おぼろげな人体が横たわっています。これは「永遠に続く確固としたものはない」という絹谷の無常観を表しており,そのため,空間も人体も不安定で崩壊していくような様子で描かれています。
絹谷幸二 《アンセルモ氏の肖像》 1973年
留学後は,イタリアの明るい街の雰囲気に触発され,作品にも鮮やかな色彩が見られるようになります。イタリア滞在中に制作された《アンセルモ氏の肖像》では,画面の多くを占める真っ赤な床が目を引きます。アンセルモ氏の頭部はカラフルな色の帯で埋め尽くされていますが,やはりこれも色の帯によって形が解体されています。ところが,いつの頃からか,絹谷の考えに変化が生まれます。「イメージは形を作る」という想いを持つようになり,本展のために制作された新作《光輝龍王二条城》にもそれは表れています。燦々と輝く太陽をバックに,二条城の上空を飛翔する龍が描かれています。明るい色彩でダイナミックに描かれた太陽と二条城に降り注ぐ金銀の光は,明るく平和な未来を見据える作家の想いで溢れています。
絹谷幸二 《光輝龍王二条城》 2017年
御紹介した作品の他にも,初期から新作に至る代表作を一堂に会する大規模な展覧会です。会期中は,公開制作や作家本人によるギャラリートークなど,作家と触れ合うイベントも多数開催します。
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