2018年5月21日
こいのぼりなう!
須藤玲子×アドリアン・ガルデール×齋藤精一による
インスタレーション
国立新美術館 学芸課長 長屋光枝
4月11日に開幕した「こいのぼりなう!」展は,国立新美術館が開催してきた現代の表現を紹介する展覧会のなかでも,とりわけユニークな試みです。2000平米,天井高8メートルの展示室には,ほとんど壁が設置されていません。その広大な空間を319匹もの大きなこいのぼりが,群れをなして泳ぎまわっているのです。

「こいのぼりなう!」展 展示風景 国立新美術館
撮影:加藤健
こいのぼりといっても,いわゆる伝統的なこいのぼりとは一風変わっています。それらは立体的で,魚といわれれば分かる程度にまで抽象化されています。何より,この現代のこいのぼりに使用されているのは色とりどり,そして風合いも様々なテキスタイル(布)です。一匹一匹すべてに異なったテキスタイルが用いられ,それらは,複雑な織ものであったり,カラフルなプリントであったり,個性的に加工されていたりします。
これら現代のこいのぼりたちを生んだのは,国際的に活躍するテキスタイル・デザイナーの須藤玲子と,世界中の美術館の展示デザインを手掛けているアドリアン・ガルデールです。ふたりは,2008年にワシントンD.C.のジョン・F・ケネディ舞台芸術センターで開催された「こいのぼり」展で,このインスタレーションを初めて発表し,2014年にはパリのギメ東洋美術館でも新しいヴァージョンを展開しました。このたびの試みは,3回目にして最大規模を誇るインスタレーションです。

「こいのぼりなう!」展 展示風景 国立新美術館
撮影:加藤健
この東京展には,ライゾマティクスの活動で知られる齋藤精一も参加しています。齋藤は,天井にごく薄い布を設置し,風を起こして波打たせ,光をあてるという演出を手掛けました。これによって,インスタレーション全体にダイナミックな動きが加わりました。こうした視覚的な仕掛けに加え,会場には,Softpadがデザインしたサウンドも響きわたり,音にも感覚を委ねられる総合的な表現を実現しました。また,展示室の一角には,自分だけの小さなこいのぼりを作ることができるワークショップ・コーナーや,実際にこいのぼりに使用されているテキスタイルを触れる体験コーナーに加え,テキスタイルが製造された日本全国の工場を捉えた映像も流しています。

「こいのぼりなう!」展 展示風景 国立新美術館
撮影:加藤健
本展覧会は,日ごろ美術になじみのない多くの皆様に気軽に足を運んでほしいという願いから,入場無料としました。現代のクリエーターたちが協働してつくったインスタレーションを,様々なツールも含め,自分なりの仕方でお楽しみいただければ幸いです。
国立新美術館
(住所)〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
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- 10:00~18:00 毎週金・土曜日は20:00まで
入場は閉館の30分前まで
※5月26日(土)は「六本木アートナイト2018」開催に伴い22:00まで開館 - 休館日
- 毎週火曜日
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
-
http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/koinoborinow2018/