2018年8月13日
生誕110年 東山魁夷展
京都国立近代美術館 主任研究員 小倉実子
この度,京都国立近代美術館では,日本や海外の風景を描き続け,国民的画家と呼ばれて愛された日本画家東山魁夷の生誕110年を記念して,京都では30年ぶりとなる大規模な回顧展を開催いたします。

東山魁夷《道》1950年 東京国立近代美術館蔵
明治41(1908)年横浜市に生まれた東山は,神戸市で育ち,東京美術学校の日本画科に入学します。卒業後は官展に入選した後,日本画家には珍しくドイツへ留学し美術史を学びますが,父親が病に倒れたため半ばで帰国しました。帰国後も官展への出品を続け,入選はしますが,同級生たちのように特選を取ることはなく終戦を迎えます。従軍中の体験と,相次いで肉親と家を失った経験から,自然を気負うことなく素直な目と心で見つめ,そこに現れた生命に自分の心を重ねて描いた《残照》は,昭和22(1947)年の第2回日展でついに特選となり,政府に買い上げられました。戦前から風景を描いていた東山ですが,これ以降の,日本中を写生して回り,写生地の特徴を残しつつも普遍化された風景画は,日本の自然に親しんだ人々にとってはよく見知っているもののように感じられ,素直に心を委ねることのできるものとなり,やがて「国民的風景画家」あるいは「国民的画家」と呼ばれます。本展覧会は,この《残照》から始まり,平成11(1999)年90歳で亡くなるまでの,絶筆《夕星》を含む代表作約80点を時代順に6つの章に分けて紹介するものです。

東山魁夷《残照》1947年 東京国立近代美術館蔵
第1章「国民的風景画」は,《残照》《道》《秋翳》等の風景画を。第2章「北欧を描く」は,《映象》《白夜光》等,昭和37(1962)年に東山が旅した北欧を描いた風景画を。第3章「古都を描く・京都」は,《花明り》《曙》等,日本の古都を代表する町であり,東山の青春の思い出の地でもある京都を描いた風景画とその習作やスケッチを。第4章「古都を描く・ドイツ,オーストリア」は,《窓》《晩鐘》等,留学中の思い出がたくさん詰まった懐かしい町ドイツ,オーストリアを昭和44年再び訪れて描いた風景画を。第5章「唐招提寺障壁画 間奏 白い馬の見える風景」は,《山雲》《濤声》等,唐招提寺御影堂のために東山が10年の歳月を掛けて描いた畢生の障壁画群の再現とともに,《白馬の森》《緑響く》等,「唐招提寺障壁画」準備のための1年間だけ出現した白い馬が点景として存在する風景画。第6章「心を写す風景画」は《白い朝》《行く秋》《夕星》(絶筆)等,特定の地から離れ,東山の心の中に形作られた風景画を,御覧いただきます。

東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画のうち《山雲》(部分) 1975年 唐招提寺蔵

東山魁夷《緑響く》1982年 長野県信濃美術館 東山魁夷館蔵
唐招提寺の全障壁画と,東山の代表作を多く所蔵する長野県信濃美術館 東山魁夷館,東京国立近代美術館のよりすぐりの作品が一堂に会するこの機会を是非,お見逃しなく。
京都国立近代美術館
(住所)〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町
- お問合せ
- 075-761-4111
- 交通
- JR~バスを御利用の方
■JR・近鉄京都駅前(A1のりば)から
市バス5番 銀閣寺・岩倉行き
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ■JR・近鉄京都駅前(D1のりば)から
阪急電鉄・京阪電鉄~バスを御利用の方
市バス100番(急行)清水寺・銀閣寺行き
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪三条駅から
市バス5番 銀閣寺・岩倉行き
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪祇園四条駅から
市バス他系統御利用の方
市バス46番 祇園・平安神宮行き
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車徒歩5分
地下鉄を御利用の方
「東山二条・岡崎公園口」下車徒歩約10分地下鉄東西線「東山」駅下車1番出口より徒歩約10分
- 開館時間
- 火曜日~木曜日,日曜日 9:30~17:00
金・土曜日は21:00閉館(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日(ただし,9月17日,24日,10月8日は開館。9月18日,9月25日は休館)
- 観覧料
-
当日一般1,500円(1,300円),大学生1,100円(900円),高校生 600円(400円)
※( )内は前売り・20名以上の団体料金
※中学生以下無料
※障害者手帳を御持参の方(付添の方1名を含む)は無料
- ホームページ
- 生誕110年 東山魁夷展 ホームページ
http://kaii2018.exhn.jp/
京都国立近代美術館ホームページ
http://www.momak.go.jp/index.html