2019年4月26日
川勝コレクション
鐘溪窯 陶工・河井寬次郎
京都国立近代美術館 研究員 大長智広
「いつになつたらほんとうに私のものが造り得られるだらう。」(大正10年)
「すべてのものは自分の表現」(昭和23年)
ここに河井寬次郎の二つの言葉を挙げてみました。一つは河井が陶工(陶芸家)としてデビューした年のもの,もう一つは河井の後年の言葉になります。この間に30年ほどの年月が経過していますが,後者からは,表現者としての自身の歩みを肯定し,生き生きと喜びを持って制作活動に励む河井の姿が見えてくるかのようです。

河井寬次郎《三色打薬陶彫》昭和37(1962)年
日本は世界有数の陶芸大国として知られており,中でも民藝運動に関わった河井寬次郎は,世界的な名声を得た近代日本を代表する陶工(陶芸家)の一人です。一般的に陶工と陶芸家という言葉の違いは,職人的な意識の有無によります。しかし,「ひとりの仕事でありながら ひとりの仕事でない仕事」と考えていたように,河井は確固たる美意識を持った陶芸家でありながら,一方で無数の先人(職人)たちが仕事上で残した遺産を引き継いだところに自分の表現があることに自覚的でした。ここには個人を超えたものづくりの世界の可能性が広がっており,その意味で河井は自身を「陶工」の系譜に連なると見なしていました。

河井寬次郎《白地草花絵扁壺》昭和14(1939)年
河井寛次郎は,明治23年に現在の島根県安来市に生まれました。大学を卒業後,河井は京都市(立)陶磁器試験場に技手として勤務し,膨大な数の釉薬研究に没頭します。大正6年に試験場を辞した後,大正10年に最初の個展を開催し,中国・朝鮮陶磁を手本とした作風で華々しいデビューを飾りました。しかしその後,民藝運動に参画することで制作の方向性を大きく変え,暮らしと創作の密接な関係において作陶活動を展開していきました。

河井寬次郎《三彩双魚文瓶子》大正11(1922)年
京都国立近代美術館は,質,量ともに最も充実した河井作品(川勝コレクション)を所蔵しています。計425点にも上る川勝コレクションは,初期から最晩年にいたるまでの河井の代表的な作品を網羅しており,その仕事の全貌を物語る「年代作品字引」となっています。コレクションを形成した故・川勝堅一氏は,髙島屋東京支店の宣伝部長や髙島屋総支配人などを務めた人物です。河井と川勝の長年にわたる交友は,河井の初個展にまで遡ります。コレクションについて川勝は「河井・川勝二人の友情の結晶」であると述べています。

河井寬次郎《呉須筒描鳥文陶板「喜者皆美」》昭和26(1951)年
本展では,川勝コレクションの中から初期から晩年にいたる河井作品の名品約250点を一堂に展示するとともに,民藝運動を通じて河井と交遊関係のあった富本憲吉,バーナード・リーチ,濱田庄司らの作品を併せて御紹介します。
京都国立近代美術館
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- 観覧料
- 京都新聞創刊140年記念 川勝コレクション 鐘溪窯 陶工・河井寬次郎
一般1,300円(1,100円),大学生900円(700円),高校生500円(300円)
※( )内は前売・20名以上の団体料金
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