2019年7月17日
国立西洋美術館開館60周年記念
松方コレクション展
国立西洋美術館主任研究員 陳岡めぐみ
国立西洋美術館開館60周年を記念した本展は当館設立の基礎となった松方コレクションに光をあて,当館の所蔵品を核としつつ,名高いゴッホ《アルルの寝室》をはじめとする国内外に散逸した作品や,未公開の新資料も併せて展示し,歴史的な文脈の中でその形成と散逸の過程を跡づけます。

フランク・ブラングィン《松方幸次郎の肖像》1916年 油彩,カンヴァス
国立西洋美術館(旧松方コレクション)
松方コレクションとは,実業家松方幸次郎(1866-1950)が,1910年代半ばから1920年代半ばにかけてロンドンやパリなどで築いたもので,日本の芸術家や国民生活に役立つような公共の美術館を作ることを目的としました。神戸の川崎造船所の初代社長として松方は欧米の最新の造船技術を積極的に取り入れて事業を拡大していく一方,各地で画家や批評家,美術館関係者など専門家の協力を得て,多様な地域,時代,そして絵画から工芸品まで多様なジャンルの作品を買い集めます。近年,ロンドン焼失作品のリストが見つかったことによって全貌がおおよそ明らかになり,その総数は実に3000点を超え,フランスから買い戻した浮世絵約8000点も加えれば1万点を超えるという大規模なものであったことがわかっています。

クロード・モネ《睡蓮》 1916年 油彩,カンヴァス
国立西洋美術館(松方コレクション)
しかし1927年,昭和金融恐慌のあおりで松方率いる川崎造船所は経営破綻に陥り,コレクションは流転の運命をたどります。日本に到着していた作品群は売り立てられ,ヨーロッパに残されていた作品も一部はロンドンの倉庫火災で焼失,一部は第二次世界大戦末期のパリでフランス政府に接収されました。戦後,フランスから日本へ寄贈返還された375点とともに1959年に上野に国立西洋美術館が誕生したとき,ようやく松方コレクションは安住の地を見いだします。

クロード・モネ《睡蓮,柳の反映》 1916年 油彩,カンヴァス
国立西洋美術館(旧松方コレクション)
本展は,松方コレクションを代表する1枚といえるモネの《睡蓮》を幕開けとする「プロローグ」と,8つのセクション,そして2016年に発見されたモネの《睡蓮,柳の反映》を1年にわたる修復処置を経て初めて披露する「エピローグ」を通じて,時代の荒波に翻弄され続けた松方コレクションの100年に及ぶ長い航海の軌跡をたどります。長く上野の地で慣れ親しまれてきた松方コレクションの新たな魅力を知るとともに,この数奇なコレクションが日本における西洋美術の受容の歴史に果たしてきた役割とその意義に改めて思いをはせる機会となれば幸いです。
国立西洋美術館
(住所)〒110-0007 東京都台東区上野公園7番7号
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅下車(公園口)徒歩1分
京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
東京メトロ銀座線,日比谷線上野駅下車 徒歩8分 - 開館時間
- 午前9時30分~午後5時30分
毎週金・土曜日:午前9時30分~午後9時
※入館は閉館の30分前まで - 休館日
- 月曜日,(ただし,7月15日(月・祝),8月12日(月・休),9月16日(月・祝),9月23日(月・祝)は開館),7月16日(火)
- 観覧料
- 当日:一般1,600円,大学生1,200円,高校生800円
団体:一般1,400円,大学生1,000円,高校生600円
※団体は20名以上。
※中学生以下は無料。
※2019年7月20日(土)~8月6日(火)は高校生無料。(入館の際に学生証を御提示ください)
※心身に障害のある方及び付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳を御提示ください)。 - ホームページ
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https://www.nmwa.go.jp/jp/index.html