2019年10月28日
ようこそジャコメッティさん
国立国際美術館 広報室長 橋本梓
国立国際美術館は平成30年度にアルベルト・ジャコメッティのブロンズ彫刻《ヤナイハラ Ⅰ》(1960-1961)を収蔵しました。これはとても特別なことで,是非皆様にゆっくりとこの作品に向き合っていただきたく,特集展示を企画しました。現在開催中の特集展示は「ジャコメッティと Ⅱ」で,「ジャコメッティと Ⅰ」に引き続き,国立国際美術館のコレクションの中で《ヤナイハラ Ⅰ》をどのように鑑賞することが可能なのか,その深さと広がりをお楽しみいただくものとなっています。

左:アルベルト・ジャコメッティ《男》1956年
右:アルベルト・ジャコメッティ《ヤナイハラ Ⅰ》1960-61年
ともに国立国際美術館蔵
撮影:福永一夫
《ヤナイハラ Ⅰ》はどうして特別な作品なのでしょうか。アルベルト・ジャコメッティは1901年にスイスに生まれ,パリで活躍した20世紀を代表する彫刻家の一人です。シュルレアリスムなどの作風を経て,第二次世界大戦後に発表した細長い彫刻で高い評価を得ました。ジャコメッティは絵画と彫刻を同時に手掛けましたが,そのモチーフの多くは人物です。妻,弟,母などの身近な人物以外に,唯一長い間モデルを務めたのが《ヤナイハラ Ⅰ》のモデルとなった矢内原伊作でした。
矢内原伊作は哲学研究者で,パリに滞在している間にジャコメッティと出会い,モデルを務めるようになりました。矢内原が日本へ帰ってからも,ジャコメッティは何度も矢内原をパリへ招待し,なんとのべ230日以上,矢内原はモデルを務めたのです。油彩画は20点以上が生まれましたが,完成した彫刻はたった2点。そのうちの1点が《ヤナイハラ Ⅰ》というわけです。すべての鋳造を合わせても,国内にあるヤナイハラ彫刻は国立国際美術館の一体のみなのです。
当館では第二次世界大戦後から現代までの美術をコレクションの対象としています。現在「ジャコメッティと Ⅱ」では,より私たちの生きる時代に近い作品,写真や映像作品,そしてパフォーマンス作品も取り混ぜて,《ヤナイハラ Ⅰ》を御覧いただきます。新しい人物表現の方法,ジャコメッティについての知られざるストーリーを紡ぐ映像インスタレーション,ジャコメッティと矢内原が行ったような「協働」をテーマとした若手作家の佳作まで,《ヤナイハラ Ⅰ》を通じたコレクションの再発見をどうぞお楽しみください。

テリーサ・ハバード/アレクサンダー・ビルヒラー《フローラ》2017年
国立国際美術館蔵
第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 スイス館での展示風景,2017年
Courtesy the Artists, Tanya Bonakdar Gallery, New York / Los Angeles and
Lora Reynolds Gallery, Austin Photo Credit: Ugo Carmeni

加藤翼《言葉が通じない》2014年
国立国際美術館蔵 撮影:坂倉圭一
国立国際美術館
(住所)〒530-0005 大阪市北区中之島4-2-55
- 問合せ
- 06-6447-4680
- 交通
-
京阪電車中之島線「渡辺橋駅」(2番出口)から南西へ徒歩約5分
Osaka Metro四つ橋線「肥後橋駅」(3番出口)から西へ徒歩約10分
JR「大阪駅」,阪急電車「大阪梅田駅」から南西へ徒歩約20分
JR大阪環状線「福島駅」,東西線「新福島駅」(2番出口)から南へ徒歩約10分
阪神電車「福島駅」(3番出口)から南へ徒歩約10分
Osaka Metro御堂筋線「淀屋橋駅」,京阪電車「淀屋橋駅」(7番出口)から西へ徒歩約15分
大阪シティバス「大阪駅前」から,53号・75号系統で,「田蓑橋」下車,南西へ徒歩約3分
- 開館時間
- 10:00~17:00 毎週金・土曜日は20:00まで
入場は閉館の30分前まで - 休館日
- 月曜日(ただし祝休日は開館し,翌日休館)
- 観覧料
- 一般430円(220円),大学生130円(70円)
( )内は20名以上の団体料金
夜間割引料金(対象時間:金曜・土曜の17:00以降):一般250円,大学生70円
高校生以下,18歳未満・65歳以上無料(要証明)
心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)
※「ジャコメッティと Ⅱ」以外の観覧料は,展覧会によって異なります。 - ホームページ
- http://www.nmao.go.jp/