2019年12月23日
こころの窓を開く旅—「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」
東京国立近代美術館 企画課長 蔵屋美香
この展覧会は,一般財団法人 窓研究所と美術館がタッグを組み,窓をテーマとする作品115点を集めて御紹介するものです。アンリ・マティスやパウル・クレーの絵画から,ル・コルビュジエら建築家の素描,現代美術の巨匠,ゲルハルト・リヒターの立体作品までが一堂に会します。

窓とは,室内に開いた四角い枠(窓枠)を通してその向こうに広がる外の景色を楽しむためのもの。一方絵画とは,やはり室内の壁に設けられた四角い枠(額縁)を通してその中に広がる別の世界の眺めを楽しむためのもの。こんなふうに窓と絵画の二つが大変よく似ていることを指摘したのは,イタリア・ルネサンスの人文学者,レオン・バッティスタ・アルベルティという人でした。この定義は多くの画家たちに知られるようになり,以来約600年,窓をモチーフとする数多くの作品が作られてきました。同じ関心は20世紀以降,絵画だけでなく写真,映像といった新しいメディアにも引き継がれ,今日にいたっています。
この展覧会で御紹介するのは,それら膨大な作品のうちほんの一部です。それでも窓というテーマの持つ幅広さゆえに,バラエティに富んだたくさんの作品が集まっています。見終わった後にはきっと,たくさんの異なる世界を窓から眺めながら長い旅をした,そんな気分を味わっていただけるでしょう。
例えばマティスの作品《待つ》(1921-22年,愛知県美術館)を見てみましょう。南仏ニースで描かれたこの作品,向かって左の女性は開いたカーテンの前で窓の外の海を見つめ,右の女性は閉まったカーテンの前でうなだれています。二人はどんな関係で,それぞれ何を思い,何を待っているのでしょう?窓辺にたたずむ二人の隠された心理劇をついあれこれ想像してしまいます。

アンリ・マティス《待つ》1921-22年 愛知県美術館
またアート・ユニット,西京人(小沢剛+陳劭雄+ギムホンソック)の《第3章:ようこそ西京に―西京入国管理局》(2012年)は,国が外に対して開く窓ともいえる入国管理局をテーマにした作品。ここでは「あること」をしないと,幻の国,西京国へは入国できません。ユーモアと勇気をもって,是非チャレンジしてみてくださいね。

西京人(小沢剛,陳劭雄,ギムホンソック)
《第3章:ようこそ西京に―西京入国管理局》2012年
作家蔵 courtesy of the artist
撮影:木奥恵三
美術館前庭には建築家,藤本壮介の大型作品《窓に住む家/窓のない家》(2019年)がどーんと建っています。たくさんの窓が開いた立方体を二つ重ねたようなこの作品では,家の外側と内側の区別があいまいな,不思議な空間を体験することができます。

藤本壮介《窓に住む家/窓のない家》 2019年 Photo: DAISUKE SHIMA
東京国立近代美術館
(住所)〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
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東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口徒歩3分
- 開館時間
- 10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
毎週金曜日,土曜日は20:00閉館 - 休館日
- 毎週月曜日(ただし祝休日の場合は開館,翌平日休館)
- 観覧料
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一般1,200円(900円),大学生700円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金
※高校生以下及び18歳未満,障がい者手帳を御提示の方と付添者(1名)は無料 - ホームページ
- https://www.momat.go.jp