2020年3月17日
※新型コロナウイルス感染症予防対策により臨時休館となります。
詳細はHPを御覧ください。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
国立西洋美術館 主任研究員 川瀬佑介
2020年春,「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を開催します。これは,ロンドン・ナショナル・ギャラリーの幅広いコレクションから,ルネサンスから19世紀末に至る傑作61点を,すべて本邦初公開するものです。
このような,テーマを絞らずに幅広い時代の作品を紹介する,いわゆる名品展を国立西洋美術館で開催する機会は,それほど多くありません。開催する場合には,それなりの理由が伴います。第一に,その館の所蔵作品の質が押しなべて高く,こうした機会でもない限り借用が叶わない優れた作品を一堂に展覧できること。第二に,その館のコレクション及びその成立の経緯に歴史的重要性や特色が認められ,コレクションの概覧を通じて一つのストーリーを示しうること。そして第三に,その館のコレクションがこれまで我が国であまり紹介されていないこと。

カルロ・クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》
1486年 卵テンペラ・油彩・カンヴァス 207×146.7cm
©The National Gallery, London. Presented by Lord Taunton, 1864
今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は,これら3つの条件を満たした,稀有な機会となります。同館は,1824年に開館した世界を代表する美術館の一つですが,伝統的に作品の貸出しに極めて厳しく,今回が史上初の海外における大規模な所蔵品展となるからです。
同館のコレクションの特徴は,王室の収集に基づかず,市民たちが作品を持ち寄り,西洋絵画史の全貌の理解を促進するための教育機関として形成されてきた点にあります。そして,イギリスにおける作品収集と評価の歴史は,実は現在の西洋美術史の基礎を形作っている点から,極めて重要なトピックなのです。例えば,15世紀の初期ルネサンス絵画や17世紀スペイン絵画を積極的に再評価したのは彼らで,そのおかげでラファエロやルーベンスと並んで,クリヴェッリやベラスケスが西洋美術史の教科書に名を連ねているのです。そうした網羅的な収集の在り方は,その後北米を中心に各地で設立されていった美術館に決定的な影響を与え,目指すべき目標,理想として引き継がれていったのです。国立西洋美術館のコレクションも,その規模と質は到底比較できませんが,同じ流れを汲むものです。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》
1888年 油彩・カンヴァス 92.1×73cm
©The National Gallery, London. Bought, Courtauld Fund, 1924
皆さんも是非展覧会に足をお運びいただき,各々の眼で自分にとっての名作を探しながら,それらの価値を世に知らしめ,引き継いできた先達の功績にも思いを馳せていただければと思います。
国立西洋美術館
(住所)〒110-0007 東京都台東区上野公園7番7号
※新型コロナウイルス感染症予防のため,本展の開催が延期となりました。詳細は国立西洋美術館HPでお知らせします。
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
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JR上野駅下車(公園口)徒歩1分
京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
東京メトロ銀座線,日比谷線上野駅下車 徒歩8分
- 開館時間
午前9時30分~午後5時30分
毎週金・土曜日:午前9時30分~午後8時
※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 月曜日,(ただし,3月30日(月),5月4日(月・祝)は開館)
- 観覧料
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当日:一般1,700円,大学生1,100円,高校生700円
団体:一般1,500円,大学生1,000円,高校生600円
※団体料金は20名以上。
※中学生以下は無料。
※心身に障害のある方及び付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳を御提示ください)。
- ホームページ
- https://www.nmwa.go.jp/
- 巡回
- 国立国際美術館
2020年7月7日~10月18日