2020年9月30日
特別展 国立工芸館 石川移転開館記念展Ⅰ
工の芸術―素材・わざ・風土
東京国立近代美術館主任研究員 花井久穂
東京国立近代美術館工芸館は,日本を中心とする近・現代の工芸作品を展示・収蔵する美術館です。1977年,皇居の北側に位置する北の丸公園の旧近衛師団司令部庁舎(重要文化財)を活用し,東京国立近代美術館の分館として開館しました。
この度,当館は政府関係機関の地方移転施策により,2020年10月25日,石川県金沢市に移転開館します。移転後の通称は「国立工芸館」。日本海側初の国立美術館としてオープンします。工芸館が移転する「兼六園周辺文化の森」は,石川県立美術館,いしかわ赤レンガミュージアム,金沢城公園,金沢21世紀美術館などの文化施設や歴史的建造物が集まる文化ゾーンです。
陶芸・漆芸・染織・金工―工芸の生産地であり,消費地でもあった金沢は,過去から現在に至る様々な工芸の歴史と文化が集積する街です。つくり手と受け手がその土地のなかにいて,広く海外ともつながっています。近・現代工芸の多種多様なコレクションをもつ「国立工芸館」という活動体が,この街のネットワークに加わることによって,「歴史と現在をつなぐ場」・「工芸と人が出会う場」の可能性をさらに拡げていくことを目指します。
皇居のほとりから,工芸の街のなかへ。工芸のこれまでと,これから。2020年,「国立工芸館」は工芸文化の発信拠点として新たなスタートをきります。

香川勝広《銀製置物 蓑亀之彫刻》1908年
東京国立近代美術館蔵 写真:森善之
移転開館の第一幕を飾る本展では,「素材・わざ・風土」に着目し,近代日本工芸の名作約130点を展示します(展示替あり)。近年,それぞれの地方が培ってきた「風土」を新たに捉え直す動きが注目されています。

富本憲吉《色絵金銀彩羊歯文八角飾箱》1959年
東京国立近代美術館蔵 写真:森善之

富本憲吉《白磁壺》1936年
東京国立近代美術館蔵 写真:森善之
日本の工芸品は,古くから花鳥風月など四季折々の自然の姿を意匠に取り入れてきたと同時に,それ自体が自然の素材からできているという特色を持ちます。それぞれの土地で生まれた素材に人が手を加え,生活のなかで息づいてきた工芸は,日本全国一様ではなく,実に多くの多様性をもって発展してきました。

飯塚琅玕齋《花籃 あんこう》1957年
東京国立近代美術館蔵 写真:森善之
日本の近代化のなかで工芸家たちがどのように「素材―自然」と向き合ってきたか,また時代と共に「自然のイメージ」をどのように捉え直してきたか,あるいはどのように土地と「もの」の関係を紡いできたかを探り,常に更新されていく日本の「風土」を紹介します。
国立工芸館(正式名称:東京国立近代美術館工芸館)
(住所)〒920-0963 石川県金沢市出羽町3-2
- 問合せ
- 03-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
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JR金沢駅東口(兼六園口)からのアクセス方法
■バス
【路線バス】
3番乗り場:18系統に乗車(約12分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分
7番乗り場:どの系統でも乗車可(約11分),「広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館前)」下車徒歩9分。ただし91系統のみ(約18分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社向い)」下車徒歩7分
6番乗り場:どの系統でも乗車可(約12分),「出羽町」下車徒歩7分【城下まち金沢周遊バス】
6番乗り場:右回りに乗車(約18分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分。左周りに乗車(約20分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社向い)」下車徒歩7分【まちバス】※土日祝のみ運行
5番乗り場:乗車(約20分),「金沢21世紀美術館・兼六園(真弓坂口)」下車徒歩約7分■タクシー
約4km,平常時で約10~15分 - 開館時間
- 9:30~17:30
※入館は閉館の30分前まで - 休館日
- 月曜日(ただし10月26日,11月23日,1月11日は開館),11月24日,年末年始(12月28日~1月1日)
- 観覧料
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一般500円,大学生300円
*高校生以下及び18歳未満,障害者手帳をお持ちの方と付添者1名までは無料 いずれも消費税込。 - ホームページ
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http://www.momat.go.jp