2020年11月13日
人間国宝 森口
彦 友禅/デザイン
交差する自由へのまなざし
京都国立近代美術館 研究員 大長智広
世界を魅了する日本の着物。中でも江戸時代に確立した友禅染は,多色による緻密で絵画的な模様表現を可能にしたことで,染織の装飾世界を大きく広げた染色技法です。これまでに友禅の技法では,10名が重要無形文化財保持者(いわゆる人間国宝)に任命されています。森口は,2007年に,当時父・華弘がまだ人間国宝として存命中にもかかわらず,人間国宝に任命された現代日本を代表する友禅作家です。加えて,森口は日本のみならず,世界でも高い評価を得ており,その作品は,イギリス・ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルヴァート博物館で10月25日まで開催されていた「Kimono: Kyoto to Catwalk」でも展示・紹介されました。

森口彦 《友禅着物 白地位相割付文「実り」》 2013年 三越伊勢丹ホールディングス蔵
森口彦は1941年に友禅作家の森口華弘の次男として京都に生まれました。京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)日本画科を卒業後,フランス政府給費留学生として渡仏。約三年間をパリの国立高等装飾美術学校に学びます。そして将来の方向性に明確な答えを出せずに帰国をためらっているときに,知遇を得ていた画家バルテュスを当時彼が館長を務めていたローマのフランス学館(ヴィラ・メディチ)に訪ね,そのとき彼から諭すようにある言葉を投げられました。それは「君の身近に友禅という素晴らしい伝統があるではないか。その伝統を途絶えさせてはいけない。それを今に生かすのが君たち若者の責務だ」というものです。

森口彦 《友禅着物 柳茶籠目文》 1988年 文化庁蔵 後期展示
この言葉に促されるように,森口はパリで学んだグラフィック・デザインの思考と幾何学文様を大胆に組み合わせることで,伝統工芸の「友禅」に留まらない新しい創作の可能性を拓いてきました。

森口彦 《友禅着物 緋稜文》 2000年
友禅作家として森口は,着物制作だけでなく,平面上のパターン展開による連作,日本の老舗百貨店の三越やイギリスのライフスタイルブランドのリバティ・ロンドン,フランス国立の陶磁器製作所のセーヴルなどとのコラボレーションによるデザインも多々手掛けています。これら森口の創作は,歴史的に積み重ねられてきた技と感性を出発点に社会に友禅・デザインを還元させるための実践であるといえます。

森口彦 《カップ・アンド・ソーサー「実り」》 2016年
本展では,初期から今日までの森口の着物の代表作やそれらの草稿,学生時代の習作,様々なデザイン関連の仕事など,森口の多様な活動を一堂に展示することで,友禅とデザイン,伝統と現代,東洋と西洋が様々に交差して生まれる森口彦の創作活動の全貌を御紹介いたします。
京都国立近代美術館
(住所)〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町
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月曜日,11月24日(火)
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※( )内は前売・20名以上の団体料金
※高校生以下・18歳未満は無料
※障害者手帳を御持参の方 (付き添いの方1名を含む)は無料 - ホームページ
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https://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2020/439.html