2020年12月25日
国立工芸館石川移転開館記念展Ⅱ
うちにこんなのあったら展 気になるデザイン×工芸コレクション
東京国立近代美術館 主任研究員 中尾優衣
もしも自分の家に,こんなものがあったら――と想像してみること。それは私たちが日常でふと目にしたものを,使ってみたいと思うきっかけになります。一方で,この想像は使い手の立場に限ったものではなく,作り手が新しいものを生み出す時の原動力にもなります。工芸やデザインには,人々の生活をより良いものにしたいという,作り手たちの想いが込められているのです。
ルーシー・リー《コーヒー・セット》1960年頃
Estate of the artist
撮影:エス・アンド・ティフォト
東京国立近代美術館工芸館は全国でも珍しく,工芸とデザインの両分野を対象に,展覧会と作品収集を行う美術館です。東京の皇居のほとりにある北の丸公園で,40年以上にわたって活動を続けてきましたが,2020年10月,通称「国立工芸館」として石川県金沢市に移転しました。第2のスタートラインに立った,まだ出来たてほやほやの美術館です。
国立工芸館 外観
撮影:太田拓実
美術館は,アートを体験できる「非日常」の空間だと思われがちですが,工芸やデザインは,美術の中で生活ともっとも密接に関わっている分野といえます。国立工芸館が,この新天地で,広大な工芸やデザインの世界と来館者の皆様の日常を繋ぐ接点になれば,という願いをこめて企画したのが,開館記念展の第2弾となる本展です。
富本憲吉 《色絵家形筆架》1937年
東京国立近代美術館蔵
撮影:アローアートワークス
長い歴史の中で,自分自身の,あるいは誰かの,より快適で美しく彩りのある生活を夢みたデザイナーや工芸家たちによって,様々な器や家具が作られています。本展では,クリストファー・ドレッサー(1834-1904),富本憲吉(1886-1963),ルーシー・リー(1902-1995)に注目し,生まれた時代も場所も性別も異なる3人の作家を出発点として,国立工芸館のコレクションから厳選したデザイン・工芸作品約200点を御紹介します。
クリストファー・ドレッサー《卵立て》1878年頃
東京国立近代美術館蔵
撮影:斎城卓
最近は,新型コロナウイルス感染症予防のため,リモートワークが定着したり,外出を控えたりするなど,予期せず自宅で過ごす時間が増えた方も多いのではないでしょうか。本展を企画した頃には,まさか世界中がコロナ禍に見舞われることになるとは思ってもみませんでしたが,展覧会で御紹介する作品には,皆さん自身の生活について,そして工芸やデザインについて,改めて考えるためのヒントがたくさん詰まっています。
展覧会チラシ
誰もが家の中での過ごし方や社会との関わり方を見直しつつある今だからこそ,生活を豊かにする工芸とデザインの可能性を信じた先人たちの思考をたどりながら,これからの暮らしを想像してみてはいかがでしょうか。
国立工芸館(正式名称:東京国立近代美術館工芸館)
(住所)〒920-0963 石川県金沢市出羽町3-2
- 問合せ
- 03-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
-
JR金沢駅東口(兼六園口)からのアクセス方法
■バス
【路線バス】
3番乗り場:18系統に乗車(約12分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分
7番乗り場:どの系統でも乗車可(約11分),「広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館前)」下車徒歩9分。
6番乗り場:乗車(「柳橋」行を除く)(約12分),「出羽町」下車徒歩7分【城下まち金沢周遊バス】
6番乗り場:右回りに乗車(約18分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分。左周りに乗車(約20分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社向い)」下車徒歩7分【まちバス】※土日祝のみ運行
5番乗り場:乗車(約20分),「金沢21世紀美術館・兼六園(真弓坂口)」下車徒歩約7分■タクシー
約4km,平常時で約10~15分 - 開館時間
- 9:30~17:30(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 月曜日(ただし3月29日,4月5日,4月12日は開館)
- 観覧料
-
一般500円,大学生300円
*高校生以下及び18歳未満,障害者手帳をお持ちの方と付添者1名までは無料 いずれも消費税込。 - ホームページ
- https://www.momat.go.jp/cg/exhibition/the-second-of-the-national-crafts-museums-grand-opening-exhibitions/