2021年12月17日
民藝の100年の歩みをたどる展覧会
東京国立近代美術館 企画課長 鈴木勝雄
今、なぜ「民藝」に注目が集まっているのでしょうか。「暮らし」を豊かにデザインすることに人々の関心が向かっているからなのか。それとも、日本にまだ残されている地方色や伝統的な手仕事に対する興味からなのか。いずれにせよ、およそ100年も前に柳 宗悦、濱田 庄司、河井 寬次郎が作り出した新しい美の概念が、今なお人々を触発し続けているのは驚くべきことです。

《羽広鉄瓶》
羽前山形(山形県) 1934年頃 日本民藝館
「民藝」という言葉が生まれたのは1925年12月末のこと。民藝の思想の種がまかれてから、およそ100年(正確にいうと「民藝」誕生から96年)。柳宗悦の没後60年に開催される本展では、時代とともに変化し続けた民藝の試みを俯瞰的な視点からとらえなおします。

《緑黒釉掛分皿》
(デザイン指導:吉田璋也)
牛ノ戸(鳥取県) 1930年代 日本民藝館
「民藝」とは、「民衆的工芸」を略した言葉です。民藝運動が生まれたのは、急速な近代化を経験した都市部に暮らす人々が、各地のローカルなものの価値を発見していく時代です。柳らは、若くして西洋の情報に触れ、モダンに目覚めた世代でありながら、それまで見過ごされてきた日常の生活道具の中に潜む美を見出し、工芸を通して生活と社会を美的に変革しようと試みました。
この展覧会は、柳らが蒐集した陶磁器、染織、木工、蓑、籠、ざるなどの暮らしの道具類や大津絵といった民画のコレクションとともに出版物、写真、映像などの同時代資料も織り交ぜて、総点数450点を超える作品と資料を通して、民藝の100年の軌跡を、社会や歴史や経済を含む大きな文脈の中に位置づけます。

《藁沓》
山形県 1940年頃 日本民藝館
今回とりわけ注目するのは、「美術館」「出版」「流通」という三本柱を掲げた民藝のモダンな「編集」手法と、それぞれの地方の人・モノ・情報をつなぐ民藝のローカルなネットワークです。民藝の実践は、美しい「モノ」の蒐集にとどまらず、新作民藝の生産から流通までの仕組み作り、あるいは農村地方の生活改善といった社会に対する問題提起、さらに衣食住の提案、景観保存にまで広がりました。「近代」の終焉が語られて久しい今、持続可能な社会や暮らしとはどのようなものか―「既にある地域資源」を発見し、人・モノ・情報の関係を編みなおしてきた民藝運動の可能性をいま、「近代美術館」という場から見つめなおします。
東京国立近代美術館
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
- 問合せ
- 050-5541-8600
- 交通
- 東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分(美術館に駐車場はありません)
- 開館時間
- 9:30~17:00(金・土は~20:00)入場は閉館30分前まで
- 休館日
- 月曜日(ただし2022年1月10日は開館)、
年末年始[12月28日(火)~2022年1月1日(土)]、1月11日(火)※開館日時は変更になる場合があります。ご来館前に美術館ホームページ等で最新情報をご確認ください。
- 観覧料
- 一般¥1,800 大学生¥1,200 高校生¥700
※いずれも消費税込。
※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
※本展の観覧料で入館当日に限り、
所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。 - ホームページ
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「民藝の100年」展覧会公式ウェブサイト
https://mingei100.jp/