2022年2月25日
「新収蔵記念 岸田劉生と森村・松方コレクション」
京都国立近代美術館学芸課主任研究員 梶岡秀一
京都国立近代美術館では展覧会「新収蔵記念 岸田劉生と森村・松方コレクション」を開催します。タイトルにもあるように、当館が昨年3月に岸田劉生の作品42点を一括収蔵したことを記念して開催するものです。
岸田劉生(1891-1929)は、大正期を中心に、明治末から昭和初期にかけて活躍した画家です。今回の新収蔵品42点は、劉生の初期から晩期まで各時期の代表作や重要作品を含み、彼の画業をほぼ展望できる内容といってよいでしょう。
そこで、新収蔵品とともに、当館が既に収蔵していた作品や当館へ寄託されている作品も含め、当館が保管する劉生作品56点を一挙に展示してみるのが本展覧会です。劉生自身の作品のほか、生前のパトロンだった芝川照吉の旧蔵コレクションの一部(青木繁や坂本繁二郎などの作品)や、没後の顕彰に尽力した森村・松方兄弟の旧蔵コレクションの一部(葛飾北斎や萬鉄五郎などの作品)も併せて展示します。全体の展示点数は83点となります。
いくつか作品をご覧いただきましょう。
岸田劉生《外套着たる自画像》 油彩/麻布
岸田劉生《外套着たる自画像》。1912(明治45)年3月27日に制作された20歳の自画像です。
この前年、劉生は文芸同人誌「白樺」を読み始め、そこに掲載されたルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌなどの西洋近代絵画に魅了されました。白樺派の武者小路実篤をはじめ友たちとも出会い、感化を受け、「第二の誕生」を遂げたと実感したほどでした。このゴッホ風の自画像には、当時の彼の朗らかな気分と強い自信がそのまま表出されたかのようです。
岸田劉生《壺》 油彩/麻布
岸田劉生《壺》。1917(大正6)年4月10日、25歳の作品です。
もともと風景画と人物画を好んで描いてきた劉生は、この前年から療養のため外出を控えざるを得なくなったため、室内で静物画の制作に没頭するようになりました。壺や林檎を凝視する中で「実在の力」を感じ、「実在の神秘」を探ろうとしたのです。壺を描いた絵としては3作目にあたるこの作品は、療養のため東京から神奈川の鵠沼へ転居したのちに制作されたものですが、それまでよりも一段と抑制された筆致で対象そのものに迫るかのようで、その静謐な画面は「実在」をめぐる探求の深化を物語るかのようです。
岸田劉生《舞妓図(舞妓里代之像)》 油彩/板
岸田劉生《舞妓図(舞妓里代之像)》。1926(大正15)年1月28日、34歳の作品です。
関東大震災を機に京都の南禅寺草川町へ移住した劉生は、約2年半の間、絵画制作よりも、初期肉筆浮世絵など古画の蒐集と研究に没頭しました。そして浮世絵の世界を現実に体感するかのように一時は祇園花見小路における舞妓・芸妓との遊びにも夢中になりましたが、やがて画家としての活動を再開させるため鎌倉への移住を決意。京都を去る前に描いたのがこの肖像画で、彼の京都時代の総決算ともいえる作品です。
今回の展覧会は、点数こそ多くはありませんが、劉生の生涯と芸術を初期から晩期までバランスよくたどることのできる内容になっています。また、長らく個人蔵で門外不出とされていた名品を数多くご覧いただけることでしょう。
京都国立近代美術館
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