2022年7月25日
国立西洋美術館リニューアルオープン記念
自然と人のダイアローグ
フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで
国立西洋美術館 主任研究員 陳岡めぐみ
国立西洋美術館は1年半にわたる工事休館を経て、この春、活動を再開いたしました。このリニューアルオープンを記念しまして、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館の協力の下、自然と人の対話から生まれた近代の芸術の展開をたどる展覧会を開催しています。一口に自然といっても、海や空といったいわゆる風景画の題材だけではなく、人間自身から森羅万象までをも含むことができる幅広い概念です。本展では、2つの美術館のコレクションから選び出した、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画まで多彩な作品群を通じて、近代における自然に対する感性と芸術表現の展開をご覧いただきます。
フィンセント・ファン・ゴッホ
《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》
1889年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館
© Museum Folkwang, Essen
産業や社会、科学など多くの分野で急速な近代化が進んだ19世紀から20世紀にかけて、芸術家たちも新たな知識とまなざしをもって自然と向き合い、この豊かな霊感源から多彩な作品を生み出しました。アトリエから戸外の光の下へ飛びだし、流れ去る時間をとらえようとする者もいれば(I章「空を流れる時間」)、自然のなかに永遠のヴィジョンを求め、観念的、内面的な表現や革新的な造形的実験へ展開させていく者たちもいました(II章「〈彼方〉への旅」、III章「光の建築」)。また、都市化の進展の一方、自然との対立と和解をくりかえしてきた人の営みのなかで、自然のなかの生命のサイクルに人の生死を重ね合わせたような作品も生まれています(IV章「天と地のあいだ、循環する時間」)。
アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》
1906年 油彩・カンヴァス 国立西洋美術館
流れ去る時間、永遠の時間、そして循環する時間と、「時間」が今回の一つの切り口ともいえます。また、展覧会を構成する4つのセクションは、街の空を見上げた旅人が、山や海の彼方へ、森の奥深く、水の底、意識の下層を旅し、宇宙を夢想した後に、古来、天と地のあいだで人の営みとともにあった耕作地や庭へ帰ってくる道のりでもあります。
ゲルハルト・リヒター《雲》
1970年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館
©Gerhard Richter 2022 (13012022) © Museum Folkwang, Essen
足元の草花から広大な宇宙まで、そして人間自身を内包する〈自然〉の無限の広がりから、2つの美術館のコレクションという枠で切り出した多彩な風景の響きあいをお楽しみください。そして自然と人との関係が問い直されている今日、作品との対話を通じて、見る側それぞれの心のなかに自然をめぐる新たな風景を生み出していただければ幸いです。
ポール・シニャック《サン=トロペの港》
1901-1902年 油彩・カンヴァス 国立西洋美術館
国立西洋美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅下車(公園口)徒歩1分
- 京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分
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- 開館時間
- 9:30~17:30
- 毎週金・土曜日 9:30~20:00
- ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 月曜日、7月19日(火)(ただし、7月18日(月・祝)、8月15日(月)は開館)
- ※予告なく変更になる場合があります。最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください。
- 観覧料
- 一般2,000円、大学生1,200円、高校生800円
- ※日時指定制。詳細は展覧会公式サイトチケット情報をご確認ください。
- ※中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料(入館の際に学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳をご提示ください)。
- ※国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校の学生・教職員は各料金から200円引き(国立西洋美術館券売窓口にて学生証または教職員証をご提示ください)。
- ホームページ
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