2022年12月23日
オスカー像とかかし――特集上映「アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション」
国立映画アーカイブ 教育・発信室 任期付研究員 玉田健太
国立映画アーカイブは2023年1月4日から2月5日まで、共催企画「アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション」を開催します。同館が保存・復元した映画を中心に、23プログラム35作品を上映します。「アカデミー」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは毎年3月に授賞式が行われるアメリカのアカデミー賞かと思います。この祭典を運営している映画芸術科学アカデミーの映画保存部門として、同館は1991年に正式に発足しました。現在、外国映画も含めて23万本もの所蔵数を誇っています。その運営資金の一部を、アカデミー賞授賞式に関連する収益から得ていることも特徴的です。

アカデミー・フィルム・アーカイブ フィルム保存庫 Nite Christenson/©A.M.P.A.S.
さて、同館を紹介する本企画を準備するにあたって、当初は今回上映する『恋の手ほどき』といった「アカデミー賞作品賞」の有名作・大作中心に想定していました。しかし、同館は膨大な数のインディペンデント映画、ドキュメンタリーや実験映画のデジタル復元を行っており、上映機会の希少なこれらを中心にプログラムを組むことになりました。インディペンデント映画作家のニナ・メンケス監督『クイーン・オブ・ダイヤモンド』など、日本では鑑賞機会が稀ですが、アメリカ本国や世界で高く評価されている先鋭的な作品は今回の目玉のひとつです。

『クイーン・オブ・ダイヤモンド』Queen of Diamonds, 1991 © Arbelos Films
しかし、目玉=著名な作品とは限りません。同館側から提案された『きゅうり畑のかかし』という映画について知っている人はどれほどいるでしょうか。監督はロバート・J・カプラン、私は知りませんでした。しかしながら、主演はアンディ・ウォーホル製作の映画で有名なホリー・ウッドローン、さらに「メリー・ポピンズ」という役名でタリー・ブラウンも出演しているNYアンダーグラウンドの色が濃厚なミュージカル風の映画で、同館が近年消滅の危機から「救出」した作品とのこと。これはぜひ上映したいということでプログラムに入れました。

『きゅうり畑のかかし』Scarecrow in a Garden of Cucumbers, 1972

『恋の手ほどき』Gigi © 1958 WBEI
いっぽう、オスカーを9部門で獲得した『恋の手ほどき』は、同じくミュージカルとはいえ製作の背景が全く異なります。しかし、主人公ジジの家のシーンのように、監督のヴィンセント・ミネリや美術・衣裳のセシル・ビートンらが作り上げた過剰なまでにデザインされた空間を、「実験」として見ることもできるでしょう。スクリーンでの上映ですので、すでに配信等でご覧の方も細部まで着目して観ていただけるかと思います。そのほか、人気作から日本初上映の知られざる作品まで、合計23プログラム35作品を通して、みなさま各々の視点を発見して楽しんでいただければ嬉しいです。
国立映画アーカイブ
特集上映「アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション」
2023年1月4日[水]-2月5日[日]
共催:アカデミー・フィルム・アーカイブ
会場:B1階 小ホール
〒104-0031 東京都中央区京橋 3-7-6
- 問合せ
- ハローダイヤル 050-5541-8600
- 交通
- 東京メトロ銀座線京橋駅出口1から昭和通り方向へ徒歩1分
- 都営地下鉄浅草線宝町駅出口A4から中央通り方向へ徒歩1分
- 開館時間
- 11:00am-9:00pm
- ※各上映のスケジュールはHPでご確認ください。
- 休館日
- 月曜日
- チケット料金
- 一般:1,000円/高校・大学生・65歳以上:700円/小・中学生・障害者(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズ・未就学児・優待:500円※オンライン購入の方法等チケットについてはHPをご確認ください。
- ホームページ
- 巡回上映情報
- 本企画は下記会場でも開催します。上映作品などの詳細は後日各館のHPで発表します。
- 福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ
- 会期:2023年2月1日(水)-26日(日)
- 京都文化博物館フィルムシアター
- 会期:2023年2月18日(土)-3月1日(水)