2023年2月24日
惹句にご注目――企画展
「ポスターでみる映画史 Part4 恐怖映画の世界」
国立映画アーカイブ 特定研究員 藤原征生
現在、国立映画アーカイブでは企画展「ポスターでみる映画史 Part4 恐怖映画の世界」を開催中です(3月26日まで)。
映画に関する資料のうち、映画フィルムを除くあらゆる資料は「ノンフィルム資料」と呼ばれ、映画史をひも解く上で重要な物証となります。その筆頭に挙げられるのが、作品宣伝の顔として掲出されるポスターです。中には高いデザイン性を有するものもあり、その芸術的価値も無視することはできません。
一方、映画は誕生以来サスペンス、SF、さらにはミュージカルといった多種多様なジャンルを行き来しながら「恐怖」を描き続けてきました。また、日本を中心としたアジア諸国では、怪談文化に根ざした恐怖映画の流れが今なお隆盛を誇っています。
国立映画アーカイブでは、2013年の「西部劇の世界」を皮切りに、ポスターに着目した展覧会シリーズ「ポスターでみる映画史」を断続的に開催してきました。第4弾となる今回は、国立映画アーカイブが所蔵する映画ポスターを中心としたノンフィルム資料を通じて、20世紀初頭の古典から「Jホラー」の最新作まで、映画史において看過することのできない恐怖映画の系譜を網羅的にたどります。

怖いものが苦手で展示を見に行く勇気がないという方も、どうぞご安心ください。本展覧会は決して恐怖一辺倒ではありません。その理由は展覧会で主に取り上げる日本版映画ポスターの特徴に隠されています。
日本版ポスターの特徴、それは惹句(キャッチコピー)にあります。日本語の惹句は、ポスターヴィジュアルの恐怖感を増幅させるだけでなく、時には脱臼させてしまうような仕掛けとして働きます。
例えば『フランケンシュタインの逆襲』では、毒々しい配色のみならず、音に言及した珍しい惹句によって、気味悪さが最大限に増幅されます。

『フランケンシュタインの逆襲』
(1957年、日本公開同年、テレンス・フィッシャー監督)
また『サスペリア』は、日本公開時に「決してひとりでは見ないでください」という言葉が流行語になるなど、惹句が作品以上に注目を浴びた例として有名です。

『サスペリア』
(1977年、日本公開同年、ダリオ・アルジェント監督)
対して『ゾンビ』のポスターでは、襲いかかるゾンビの写真にミスマッチな「ひとり歩きは危険です」という惹句が添えられ、一抹の可笑しさすら漂います。

『ゾンビ』
(1978年、日本公開1979年、ジョージ・A・ロメロ監督)
このように本展覧会では、ヴィジュアル以上に恐ろしい、あるいは思わず笑いを誘うような名(迷?)惹句が光るポスターの数々をお楽しみいただけます。恐ろしさと可笑しさが交錯する展覧会を通じて、恐怖映画の奥深き世界に興味を抱いていただけると幸いです。
国立映画アーカイブ
企画展「ポスターでみる映画史 Part 4 恐怖映画の世界」
2022年12月13日[火]-2023年3月26日[日]
会場:7階 展示室
(住所)〒104-0031 東京都中央区京橋 3-7-6
- 問合せ
- ハローダイヤル 050-5541-8600
- 交通
- 東京メトロ銀座線京橋駅出口1から昭和通り方向へ徒歩1分
- 都営地下鉄浅草線宝町駅出口A4から中央通り方向へ徒歩1分
- 開館時間
- 11:00am-6:30pm(入室は6:00pmまで)
- ※2月24日(金)は11:00am-8:00pm(入室は7:30pmまで)
- ※詳細はHPをご確認ください。
- 休館日
- 月曜日
- 観覧料
- 一般:250円(200円)/大学生:130円(60円)/65歳以上、高校生以下及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズ:無料
- ※( )内は20名以上の団体料金。詳細はHPをご確認ください。
- ホームページ