2023年7月25日
「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」展
国立西洋美術館 主任研究員 川瀬佑介
国立西洋美術館は、スペインの大画家フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)の四大版画集を初版ですべて収蔵し、それらに基づいて1999年、2011年とゴヤの版画を中心とした展覧会を開催してきました。今回の「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」展は、そうした伝統に基づきながら、ゴヤだけにとどまらない、スペインに関するより幅広い時代とジャンルの版画をご紹介する企画です。

作者不詳《メメント・モリ》 17世紀
木版/紙 国立西洋美術館
スペインは、今でこそ世界中の観光客から高い人気を誇る国ですが、歴史的には「ピレネーの向こうはアフリカである」と揶揄されたほど、他のヨーロッパ諸国にとって未知の、馴染みの薄い異国でした。しかしナポレオンの侵略とスペイン独立戦争(1808-14年)を契機にヒトとモノの本格的な往来が始まり、ロマン主義の時代にスペインは他のヨーロッパ諸国からそのエキゾチックな魅力を本格的に「発見」されてゆきます。フラメンコ、闘牛、アルハンブラ、ドン・キホーテ…我々が思い浮かべるスペインの典型的な「イメージ」の多くは、19世紀にこの国を訪れた外国人旅行者たちによって確立されたものでした。そしてそうしたイメージの形成、流通に大きな役割を果たした媒体が、大量に刷ることができ、簡単に持ち運びができた版画でした。

フランシスコ・デ・ゴヤ〈ロス・カプリーチョス〉16番《神よお赦し下さい、それが母親だったとは》1799年
エッチング、アクアティント、バーニッシャー、ドライポイント/紙 国立西洋美術館
本展は、スペインに関わる版画制作の史的展開を17世紀初頭から 20世紀後半までの長大な時間軸で概観し、写し伝えることのできる版画が、スペインの文化・美術に関するイメージの形成や流布にどのように貢献したか、約240点の作品から探るこれまでにない企画です。リベーラからゴヤ、フォルトゥーニ、ピカソ、ミロ、ダリら巨匠たちの仕事を含んだスペイン版画の系譜を辿ることに加え、ドラクロワやマネなど19世紀の英仏で制作されたスペイン趣味の作品を多数紹介します。また、本展は国立西洋美術館の収蔵品を中心に、国内の約40箇所から作品を拝借し、今日までの日本における(とりわけ20世紀の)スペイン美術の受容と豊かなコレクション形成の様相を浮き彫りにすることも試みます。
皆様のご来場をお待ちしております。

エドゥアール・マネ《ロラ・ド・ヴァランス》 1863年
エッチング、アクアティント/紙 国立西洋美術館

ラモン・カザス《「アニス・デル・モノ」のポスター》 1898年
カラー・リトグラフ/紙 国立西洋美術館
国立西洋美術館
(住所)〒110-0007
東京都台東区上野公園7-7
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅下車(公園口) 徒歩1分
- 京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
- 東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分
- 開館時間
- 9:30~17:30
- 毎週金・土曜日 9:30~20:00
- ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 月曜日、7月18日(火)(ただし、7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館)
- 観覧料
- 一般1,700円、大学生1,300円
- ※高校生以下及び18歳未満、心身に障害のある方及びその付添者1名は無料です(入館の際に学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳をご提示ください)。
- ※国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校の学生・教職員は、本展を学生1,100円、教職員1,500円でご覧いただけます(学生証または教職員証をご提示のうえ当館券売窓口にてお求めください)。
- ※観覧当日に限り本展の観覧券で常設展もご覧いただけます。
- ※本展は日時指定予約制ではありません。入場方法等についての詳細は、国立西洋美術館公式サイトをご確認ください。
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