2023年11月24日
「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命
ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」
国立西洋美術館特定研究員 久保田有寿
20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の芸術家によって生み出された「キュビスム」は、西洋美術の歴史に大変革をもたらしました。その名称は、1908年にブラックの絵画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来します。
ルネサンスの時代以来、ヨーロッパの絵画は、目に見える現実の世界をそっくりそのまま絵の中に写し取ることが常識となっていました。しかし、伝統的な遠近法や陰影法による三次元的な空間表現から脱し、幾何学的な形によって画面を構成するキュビスムの試みは、何百年も守られてきた常識や価値観から画家たちを解放しました。

ロベール・ドローネー《パリ市》1910-1912年、油彩/カンヴァス
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création
industrielle (Achat de l’Etat, 1936. Attribution, 1937)
© Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP
慣習的な美に果敢に挑み、見せかけや表層的ではない現実を描き出すための全く新しい表現を切り開いたこの「芸術の大革命」は、パリの美術界に大きな衝撃を与えます。そして、絵画や彫刻のみならず、装飾・デザイン、建築、舞台美術や映画など、さまざまな分野で瞬く間に世界中に広まり、以後の芸術の多様な展開に決定的な影響を及ぼしました。
本展では、世界屈指の近現代美術コレクションを誇るパリのポンピドゥーセンター/国立近代美術館の所蔵品から、キュビスムの歴史を語る上で欠くことのできない貴重な作品が多数来日し、そのうち50点以上が日本初出品となります。キュビスムの広範な歴史的展開を、主要作家約40人による絵画を中心に、彫刻、素描、版画、映像、資料など約140点を通して紹介します。日本でキュビスムを正面から取り上げる本格的な展覧会はおよそ50年ぶりです。

フェルナン・レジェ《婚礼》1911-1912年、油彩/カンヴァス
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création
industrielle (Don de M. Alfred Flechtheim, 1937)
© Centre Pompidou, MNAM-CCI/Philippe Migeat/Dist. RMN-GP
14章で構成される本展では、ポール・セザンヌやアンリ・ルソーの絵画、アフリカ彫刻など、キュビスムの多様な源泉を探ることから始まり、ピカソとブラックがそれらを大胆に解釈しながら、緊密な共同作業によって全く新しい絵画を発明する軌跡を追います。さらに、その後のキュビスムの展開に重要な役割を果たしたフェルナン・レジェやフアン・グリス、純粋な色彩表現を追求し、抽象を先駆する新境地を開いたロベール・ドローネーとソニア・ドローネー、キュビスムを吸収しながら独自の作風を打ち立てていったマルク・シャガールやアメデオ・モディリアーニら国際色豊かで個性的な芸術家たちが次々と登場します。後半では、第一次世界大戦という未曽有の惨事を経て、国立西洋美術館本館のデザインにもつながるル・コルビュジエらのピュリスムの運動や機械美学が台頭してくるまでをご紹介します。

アメデオ・モディリアーニ《女性の頭部》1912年
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création
industrielle (Achat, 1949)
© Centre Pompidou, MNAM-CCI/Philippe Migeat/Dist. RMN-GP
国立西洋美術館
(住所)〒110-0007
東京都台東区上野公園7-7
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅下車(公園口)徒歩1分
- 京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
- 東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分
- 開館時間
- 9:30~17:30
- 毎週金・土曜日 9:30~20:00
- ※入館は閉館の30分前まで
- 会期
- 2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日)
- 休館日
- 月曜日(ただし2024年1月8日(月・祝)は開館)、12月28日(木)~2024年1月1日(月・祝)、1月9日(火)
- 観覧料
- 一般2,200円、大学生1,400円、高校生1,000円
- ※中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料です(入館の際に学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳をご提示ください)。
- ※11月14日(火)~11月26日(日)は高校生無料観覧日です(ただし11月20日(月)は休館)。学生証をご提示ください。
- ※国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校の学生・教職員は、本展を学生1,200円、教職員2,000円でご覧いただけます(学生証または教職員証をご提示のうえ当館券売窓口にてお求めください)。
- ※観覧当日に限り本展の観覧券で常設展もご覧いただけます。
- ※本展は日時指定予約制ではありません。
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