2023年12月26日
新たな視点と出会う旅――特集上映「蘇ったフィルムたち チネマ・リトロバート映画祭」
国立映画アーカイブ 特定研究員 中西香南子
国立映画アーカイブは2024年1月5日から2月4日まで、共催企画「蘇ったフィルムたち チネマ・リトロバート映画祭」を開催します。映画祭の名称に「映画再発見」を冠する同映画祭は、古今東西の発掘・復元された映画に関心を寄せる世界中の映画ファン、映画批評家、アーキビスト、研究者、そして地元の人々が集う映画祭として、毎年初夏のイタリア北部・ボローニャで開催されています。この映画祭は、1986年に国際フィルムアーカイブ連盟(FIAF)の加盟機関であるチネテカ・ディ・ボローニャ財団が本格始動させました。発掘・復元された作品の上映とともに、今は観る機会が希少になったカーボン式映写機による上映や街の中心部にあるマッジョーレ広場に約4,000人が集まる野外上映も目玉となっています。
マッジョーレ広場での野外上映(筆者撮影)
また、チネマ・リトロバート映画祭は、世界各地のアーカイブなどで行われている映画復元の取り組みを紹介する一大拠点としての役割も果たしています。会期中は復元を担当したアーキビストや専門家によるレクチャーなども連日開催されます。技術史とともにある映画史において、復元の技術を情報交換・共有する貴重な機会ともなっているのです。
本企画では、長い歴史を誇るチネマ・リトロバート映画祭にこれまで出品された発掘・復元作の中から、25プログラム(54本)を上映します。
『無防備都市』 © Cineciita Luce, CSC – Cineteca Nazionale,
Cineteca di Bologna and Coproduction Office
今回の企画の見どころは、映画史に名を刻むネオレアリズモの代表作とされるロベルト・ロッセリーニ監督の『無防備都市』(1945年)やヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』(1948年)を出発点として、それらの作品と共鳴する世界各国の作品群です。ネオレアリズモは、素人役者の起用や野外ロケーション撮影の多用など、既存の伝統的な枠組みを攪拌し、映画の革命的な潮流となりました。
本企画では、ネオレアリズモに触発され、その後興隆する女性解放運動に先駆けて、イタリアにおける女性労働者の実情を捉えたチェッチリア・マンジーニのドキュメンタリー(『女性として生きること』[1964年])や、サブサハラ・アフリカ地域で初の劇映画を監督した女性監督サラ・マラドロールが、アンゴラ独立運動を女性・子供・高齢者の視点から描いた『サンビザンガ』(1973年)などを紹介します。
『女性として生きること』Courtesy Cineteca di Bologna
同映画祭の発起人の一人であり、現在のディレクターでもあるジャン・ルカ・ファリネッリ氏は、映画祭を映画史を辿る旅に例え、新たな復元を新しい光に例えています。”映画の迷宮のような小道”を復元された作品群の光たちとともに旅することで、映画史への新たな視点、そして映画保存や映画復元の意義を“再発見”する機会となれば幸いです。
国立映画アーカイブ
特集上映「蘇ったフィルムたち チネマ・リトロバート映画祭」
2024年1月5日[金] -2月4日[日]
共催:チネテカ・ディ・ボローニャ財団、イタリア文化会館
会場:長瀬記念ホール OZU(2階)
(住所)〒104-0031 東京都中央区京橋 3-7-6
- 問合せ
- ハローダイヤル 050-5541-8600
- 交通
- 東京メトロ銀座線京橋駅出口1から昭和通り方向へ徒歩1分
- 都営地下鉄浅草線宝町駅出口A4から中央通り方向へ徒歩1分 徒歩7分
- 開館時間
- 11:00am-9:00pm
- ※各上映のスケジュールはHPでご確認ください。
- 休館日
- 月曜日
- 観覧料
- 一般:1,300円/高校・大学生・65歳以上:700円/小・中学生・障害者(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズ・未就学児・優待:500円
- ※オンライン購入の方法等チケットについてはHPをご確認ください。
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