2024年10月25日
ハニワと土偶の近代
東京国立近代美術館主任研究員 花井久穂
古の地層から出土するハニワや土偶のイメージは日本中に浸透し、いまや押しも押されもせぬキャラクターと化しているといっていいでしょう。奇怪な形態をした縄文土器も広く愛されています。
近代美術をあらためて眺め返すと、これら出土遺物に着想を得た作品が少なくありません。出土遺物を美的に愛でる視点はいつから芽生え、一体いつから出土遺物は美術作品のなかに登場するようになったのでしょうか。

都路華香《埴輪》 1916年 京都国立近代美術館
戦後、岡本太郎やイサム・ノグチによって、それまで考古学の資料として扱われていた出土遺物の美的な価値が「発見」されたというエピソードは美術史の物語のなかで、もはや伝説化しています。「縄文vs.弥生」というきわめて分かりやすい二項対立の語りは、1950年代半ばに建築・美術にかかわる人々の間でいわゆる「伝統論争」に発展しました。

イサム・ノグチ《かぶと》 1952年 一般財団法人草月会(千葉市美術館寄託)
©2024 The Isamu naguchi Foundation and Garden Museum / ARS , NY / JASPAR , Tokyo E5599

岡本太郎《犬の植木鉢》1954年 滋賀県立陶芸の森陶芸館
しかし、近代以降、地中から掘り出された遺物に着目した人物は彼ら二人にとどまりません。明治から現代まで出土遺物は、美術に限らず、工芸、建築、写真、映画、演劇、文学、伝統芸能、思想、さらにはテレビ番組やマンガにいたるまで、幅広い領域で文化現象(ブーム)を巻き起こしてきました。戦中戦後をまたいだ二つのハニワブームと、それに次ぐ縄文・土偶ブーム。ハニワや土偶の語られ方の来歴を辿れば、それらは常に時代の価値観に翻弄され、様々に視覚化されてきたことが分かります。

斎藤清《土偶(B)》1958年 やないづ町立斎藤清美術館 ©Hisako Watanabe
なぜ、出土遺物は一時期に集中して注目を浴びたのか、その評価はいかに広まったのか、作家たちが遺物の掘り起こしに熱中したのはなぜか—
本展は美術を中心に、文化史の舞台に躍り出た「出土モチーフ」の系譜を、明治時代から昭和戦後にかけて追いかけつつ、ハニワや土器、土偶に向けられた視線の変遷を探ります。歴史を紐解き、その複雑な機微を知ることで、私たちの足下に積み重なる文化的・社会的な「地層」が浮かびあがってくるでしょう。

NHK 「おーい!はに丸」1983年-1989年放送
(左)ひんべえ (右)はに丸 劇団カッパ座
東京国立近代美術館
(住所)〒102-8322
千代田区北の丸公園3-1
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00~20:00)
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋駅」 1b出口より徒歩3分
東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」4番出口より徒歩15分
東京メトロ半蔵門線・都営新宿線・三田線「神保町駅」A1出口より徒歩15分 - 開館時間
- 10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00)
入館は閉館30分前まで - 休館日
- 月曜日(ただし10月14日、11月4日は開館)、10月15日、11月5日
- 会期
- 2024年10月1日(火)~12月22日(日)
- 観覧料
- 一般 1,800円(1,600円)
大学生 1,200円(1,000円)
高校生 700円(500円) - ( )内は20名以上の団体料金消費税込。
中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。
本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。 - ホームページ