2024年12月26日
特集上映「メキシコ映画の大回顧」
国立映画アーカイブ 特定研究員 中西香南子
国立映画アーカイブは2025年1月7日から2月9日まで、共催企画「メキシコ映画の大回顧」を開催します。
1896年8月14日にリュミエール社の技師によって初めて映画が上映されたメキシコは、社会、文化、政治的背景を色濃く反映させながら、独自の豊穣な映画文化を発展させてきました。1990年代以降はアルフォンソ・キュアロンやギレルモ・デル・トロなど世界的に活躍する監督たちが台頭していますが、それ以前のメキシコ映画が日本で網羅的に紹介される機会は、多くありませんでした。

『灰色の自動車』El automovil gris,1919
本共催企画は、メキシコ無声映画期の代表作『灰色の自動車』(1919)から、巨匠監督、スター俳優たちが活躍した黄金期の名作、1960年代に勃興した新しい潮流「ヌエボ・シネ」以降に頭角を現した監督たちによる1980年代までの話題作を、メキシコの映画保存機関であるメキシコ国立自治大学(UNAM)フィルモテカとメキシコ・シネテカ・ナシオナル、そして映画製作を支援するメキシコ映画機構(IMCINE)の所蔵作品を中心に、29プログラム(35作品)にまとめて回顧します。

『エナモラーダ』Enamorada,1946 ©︎FILMOTECA UNAM’S COLLECTION
本企画のみどころのひとつは、メキシコ映画黄金期に輝く作品群です。第二次世界大戦によって隣接する映画大国・米国が戦時体制に移行する中、1940年代に政治、経済的な安定期に入ったメキシコの映画産業は黄金期を迎えました。メロドラマ、コメディ、ミュージカル、ホラー映画だけでなく、農場を舞台にしたランチョものやキャバレーを舞台にしたキャバレーもの、国民的ヒーローであるレスラー、エル・サントが活躍するルチャ・リブレ(プロレス)ものなど独自のジャンルを次々と生み出します。また、エミリオ・フェルナンデス、ロベルト・ガバルドンらの名匠たち、ドロレス・デル・リオ、マリア・フェリックス、ペドロ・アルメンダリスら多くのスター俳優や撮影のガブリエル・フィゲロアら才能あふれる技術陣に支えられ、百花繚乱をきわめました。

『エル・サント対吸血鬼女』Santo contra las mujeres vampire,1962 ©Claro video
また、メキシコ映画においてパイオニア女性監督の一人であるアデラ・セケリョによる『誰の女でもない』、男性監督ばかりの黄金期に活躍した女性監督のマティルデ・ランデタによる『街娼』、そして70年代に映画を学んでいたフェミニストたちによる「女性映画コレクティブ〈Colectivo Cine Mujer〉」による作品群を上映します。復元によって蘇ったこれらの力強い作品群を通じて、メキシコ映画への新たな視点も紹介します。

『女のこと』Cosas de mujeres,1975 ©FILMOTECA UNAM'S COLLECTION
これらの映画フィルムを所蔵するメキシコの3機関との共催によって実現した、様々な監督・俳優・ジャンル・時代などバラエティに富んだ作品の上映を通じて、メキシコ映画の深淵なる世界と出会う絶好の機会となるでしょう。
国立映画アーカイブ 特集上映「メキシコ映画の大回顧」
2024年1月7日[火] -2月9日[日]
会場:長瀬記念ホール OZU(2階)
(住所)〒104-0031
東京都中央区京橋 3-7-6
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ銀座線京橋駅出口1から昭和通り方向へ徒歩1分
都営地下鉄浅草線宝町駅出口A4から中央通り方向へ徒歩1分 東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅出口7より徒歩5分 JR東京駅下車、八重洲南口より徒歩10分 - 開館時間
- 火曜日~日曜日11:00am-9:00pm
※各上映のスケジュールはHPでご確認ください。 - 休館日
- 月曜日
- 観覧料
- 一般\1300/65歳以上\1100/大学生・高校生\700/中・小学生・障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズ・未就学児・優待\500
※オンライン購入の方法等チケットについてはHPをご確認ください。 - ホームページ