2025年3月25日
工芸館でお花見を―移転開館5周年記念 花と暮らす展
国立工芸館任期付研究員・中川智絵
東京・竹橋の東京国立近代美術館工芸館が、工芸王国とも称される石川県金沢市に移転し、2025年10月で5年になります。2021年からは通称だった「国立工芸館」を正式名称とし、1977年の開館から変わらず日本で唯一、工芸とデザイン作品を専門に扱う美術館として活動を続けています。
国立工芸館では現在、「移転開館5周年記念 花と暮らす展」を開催しています(6月22日まで)。工芸作品というと皆さんはどのようなものを想像されるでしょうか。伝統的な技術を駆使した作品として、絢爛豪華な蒔絵や重厚な茶道具、超絶技巧を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。今回はそこから少し視点を変えて、工芸・デザイン作品の中で作家たちがどのように花を表現しているかをご紹介する展覧会です。
日本では春夏秋冬の四季の中で、季節ごとの花や色彩を生活に取り入れ、日々の暮らしを楽しんできました。多くの作家が身近な自然にテーマを求め、春の花だけでも椿や桜、牡丹などをさまざまな作品として表現しています。身の周りにある花々だからこそ、それぞれの技法や個性が際立ってきます。本展は国立工芸館の所蔵作品を中心に、春から夏にかけて咲く花などの植物をテーマにした工芸・デザイン作品と花器などのうつわをご紹介する展覧会です。
展示構成は3章に分かれています。1章は「花を象る」。春から夏にかけて、実際に咲いている花を具体的なモチーフにした作品をご紹介します。同じ植物であっても作家によって、その表現はさまざまです。多彩な花の表現にご注目ください。

十三代今泉今右衛門(善詔)《色鍋島薄墨石竹文鉢》
1982年 国立工芸館蔵
撮影:エス・アンド・ティ フォト 🄫2019
2章は「花を想う」。具体的な花の形ではなく、咲く花のイメージや作家の心象から制作され花の姿を思い起こさせる作品を集めました。作品タイトルも詩的な作品が多く、作家の眼と心がとらえたイメージと工芸ならではの豊かな素材と技法をご鑑賞ください。

川上南甫≪春燈彩影≫
1965年頃 国立工芸館蔵
撮影:ニューカラー写真印刷 🄫2008
そして3章は「花と暮らす」。花のデザインのうつわや、花を活けるための花器など、花を暮らしに取り入れた作品をご紹介しています。さらに国立西洋美術館からの特別出品作品として、モーリス・ドニの《花束を飾った食卓(マルト・ドニと二人の娘ベルナデット,アンヌ=マリー)》他1点もご紹介します。暮らしの中にある花の姿から、身近な自然と工芸・デザインの関係に改めてご注目いただければ幸いです。国立工芸館の周囲に咲く桜や豊かな新緑とともに工芸の名品をお楽しみください。

藤沼昇≪束編花籠 気≫
1992年 国立工芸館蔵
撮影:アローアートワークス 🄫2006
国立工芸館
(住所)〒920-0963 石川県金沢市出羽町3-2
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- ■バス/JR金沢駅東口(兼六園口)より乗車
3番乗り場:乗車(約12分)、「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分
6番乗り場:乗車(「柳橋」行を除く)(約12分)、「出羽町」下車徒歩5分
8番乗り場:乗車(約11分)、「広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館前)」下車徒歩9分
■車/北陸自動車道金沢西ICまたは金沢森本ICから20~30分
※近隣に文化施設共用駐車場(無料)があります。 - 開館時間
- 9:30~17:30(入館は閉館の30分前まで)
- 休館日
- 月曜日(ただし3/31,4/7,28,5/5は開館)、5/7(水)
- 観覧料
- 一般300円(250円), 大学生150円(70円)
※( )内は20名以上の団体料金・割引料金。いずれも消費税込
※高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名)は無料。
※国際博物館の日(5/18)は無料 - ホームページ