2025年7月25日
スウェーデン国立美術館所蔵 素描コレクション展
――ルネサンスからバロックまで
国立西洋美術館学芸課主任研究員 中田明日佳

ルネ・ショヴォー《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》ペン、黒インク、筆、不透明水彩、透明水彩、金泥、紙
素描(デッサン、ドローイング)は、木炭やチョーク、ペンなどを用いて描かれた、線描中心の平面作品と定義されます。絵画や彫刻をはじめとする美術作品の構想を練ったり、将来の制作の参考資料とすべく、興味ひかれた対象を写生したり、他者の作品を模写したり…と、さまざまな目的から制作されてきました。あらゆる造形の出発点となるものであり、ゆえに、16-17世紀の美術文献では、高度な知的営みにして諸芸術の基盤ととらえられています。また一方で、素描ならではの造形的特質を評価され、それ自体独立した美術作品、鑑賞の対象として受容されることもありました。

アンニーバレ・カラッチ《画家ルドヴィ―コ・カルディ、通称チゴリの肖像》1604-09年頃、赤チョーク、褐色インクによる書き込み、黒インクによる枠線、紙
ときに作家の創造の秘密を垣間見させ、ときに独特の造形的特質で人々を魅了してきた素描――その世界屈指のコレクションを所蔵する美術館が、スウェーデン国立美術館です。1792年、ストックホルムに開設された同館は、世界で最も古い美術館の一つに数えられます。中世から現代にいたる美術や工芸、デザインを幅広く収蔵していますが、とりわけ素描コレクションの豊かさにおいて知られます。同コレクションの基盤は、スウェーデン国王付きの建築家であったニコデムス・テッシン(1654 –1728年)と、彼の息子でやはりスウェーデン王室の廷臣であったカール・グスタフ・テッシン(1695-1770年)によって構築されました。

レンブラント・ファン・レイン《キリスト捕縛》ペン、褐色インク、褐色と灰色の淡彩、白色による修正、枠線、紙
本展は、この素描コレクションより選りすぐったルネサンスからバロックまでの名品、約80点を中心として、イタリア、フランス、ドイツ、ネーデルラント(現在のオランダ、ベルギーにあたる地域)という地域別の4セクションより構成されます。一連の出品作品を通して、画材や技法、制作目的、あるいは時代や地域によって、多彩な表現を見せる素描の魅力を堪能していただくのが企画の目的です。出品作品の中には、デューラーやレンブラントをはじめ、美術史上における大スターたちの作品が多数含まれており、その確かな技量や表現力に圧倒されるでしょう。一方、さほど馴染みのない作家たちの作品の中にも、お気に入りを見つけていただけることと思います。
素描は、環境変化に対して脆弱であるため、展示には制約がつきものです。それゆえ、本展のような規模で西洋素描の展覧会が開催される機会は貴重です。ぜひこの機会に、素描がもつさまざまな魅力を存分にご堪能ください。
スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで
2025年7月1日[火]-9月28日[日]
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2025drawings.html
国立西洋美術館
(住所)〒110-0007
東京都台東区上野公園7番7号
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※美術館には駐車場はございません。来館の際は公共交通機関をご利用ください。 - 開館日・時間
- 火曜日~日曜日 9:30~17:30(入場は閉館30分前まで)
毎週金・土曜日は20:00閉館 - 休館日
- 毎週月曜日、7月22日[火]、9月16日[火](ただし、7月21日[月・祝]、8月11日[月・祝]、8月12日[火]、9月15日[月・祝]、9月22日[月]は開館)
- 観覧料
- 一般2,000円、大学生1,300円、高校生1,000円 中・小学生 無料
※中学生以下、障害者手帳*をお持ちの方とその付添者1名は無料(入館の際に学生証等の年齢の確認できるもの、障害者手帳等をご提示ください)
*対象となる手帳:身体障害者手帳・ 療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳