2025年9月30日
移転開館5周年記念
ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―
国立工芸館 任期付研究員 宮川典子

国立工芸館では現在、イギリスを代表する陶芸家、ルーシー・リー(1902~1995)の展覧会を開催しています(11月24日(月・祝)まで)。本展は、日本において約10年ぶりとなるリーの大回顧展で、当館に寄託された井内コレクションを中心に約120点が展示されています。
1902年、オーストリア・ウィーンの裕福な家庭のもとに生まれたルーシー・リーは、ウィーン工芸美術学校で轆轤に出合い魅了され、陶芸の道へと進みます。ミヒャエル・ポヴォルニーに陶芸を学び、国際的な展覧会での受賞を重ね作家としての地位を確立していきました。しかし、ナチスの台頭により亡命を余儀なくされ、1938年にイギリスへと渡ります。ウィーンで育まれた新しい美術様式への造詣と、ロンドンでのバーナード・リーチやハンス・コパーとの出会いを経て、しなやかさと芯の強さを備えた独自のスタイルを築き上げました。そして、93歳で亡くなるまで精力的に制作を続けました。
彼女の作品は、小さな高台やすっきりとした形、そして色鮮やかな釉薬で知られています。本展では、私たちを魅了してやまないリーの作品の造形の源泉は何であったのかを、彼女が出会った人、もの、場所、そして時代背景を交えながら紐解きます。
本展は4章立てで、第1章では、ウィーン工芸美術学校での学びと彼女が制作をはじめた20世紀初頭のウィーンの様子を同時代の作家の作品を交えながら紹介します。

ルーシー・リー《鉢》c.1926 個人蔵 撮影:野村知也
第2章では、亡命後のロンドンで、バーナード・リーチやハンス・コパーとの出会いを通して、作風を模索した時期を紹介します。

ルーシー・リー《黄釉鉢》c.1958 井内レクション(国立工芸館寄託) 撮影:品野塁
第3章では、東洋のやきものへの関心が高まっていた時期、リーチや濱田庄司らとの交流を経て、リーの作品が独自の作風を確立しはじめる様子を探ります。

ルーシー・リー《白釉鎬文花瓶》c.1976 国立工芸館蔵 撮影:品野塁
そして、第4章では、1970年代以降の鉢や花器にみられる端正なラインと釉薬の効果が一体となり洗練された作品から、その作風の到達点を紹介します。

ルーシー・リー《ブロンズ釉花器》c.1980 井内コレクション(国立工芸館寄託) 撮影:品野塁
彼女の作品の本質は、陶磁器のもつ特質を追求して集約した内的な美しさにあるといえるでしょう。彼女がウィーンとロンドンで当時の美術のエッセンスを吸収していった20世紀初頭は、ヨーロッパで東洋のやきものへの関心が高まっていた時期にも重なります。洋の東西が入り混じる背景の中で、彼女が何をみて学び、受け入れたのか。優美で繊細な彼女の作品がどのように生まれたかをぜひご覧ください。
本展は、11月24日(月・祝)まで開催します。国内の貴重なルーシー・リー作品が一堂に会するこの機会にぜひ足をお運びいただき、お気に入りの一点を見つけてみてください。
移転開館5周年記念 ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―
2025年9月9日(火)~11月24日(月・祝)
URL: https://www.momat.go.jp/craft-museum/exhibitions/564
国立工芸館
(住所)〒920-0963 石川県金沢市出羽町3-2
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- お問合せ先
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- ■バス/JR金沢駅東口(兼六園口)より乗車
3番乗り場:乗車(約12分)、「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分
6番乗り場:乗車(「柳橋」行を除く)(約12分)、「出羽町」下車徒歩5分
8番乗り場:乗車(約11分)、「広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館前)」下車徒歩9分
■車/北陸自動車道金沢西ICまたは金沢森本ICから20~30分
※近隣に文化施設共用駐車場(無料)があります。 - 開館日・時間
- 9:30~17:30(入館は閉館の30分前まで)
- 休館日
- 月曜日(ただし9/15,10/13,11/3,24は開館),9/16,10/14,11/4
- 観覧料
- 一般1,200円(1,000円), 大学生800円(700円), 高校生500円(300円)
※( )内は20名以上の団体料金・割引料金。いずれも消費税込
※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名)は無料
※いしかわ文化の日(10/19)および文化の日(11/3)は割引料金
※3展覧会相互割引「北斎・広重 大浮世絵展」(石川県立美術館)、「ミニチュアドールハウスの世界展」(金沢21世紀美術館)の半券をお持ちの方は割引料金