2025年12月25日
アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ
国立映画アーカイブ 特定研究員 中西香南子
国立映画アーカイブでは、2026年1月15日から2月8日まで、アンソロジー・フィルムアーカイブスとの共催企画「アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ」を開催します。
アンソロジー・フィルムアーカイブス(以下アンソロジー)は、映像作家たちが中心となって設立したインディペンデントな組織として、“周縁の豊かさこそ文化を活気づける”という強い信念のもと、映画史において見落とされがちな個人映画や実験的な映像作品を軸に保存・研究・上映を行う、世界的に見ても非常にユニークなフィルムアーカイブです。
第二次世界大戦後の米国では、16mmカメラの普及やスーパー8、シングル8などの登場により、個人や小規模のインディペンデントによる映画の制作が加速し、欧州の前衛映画の潮流を受けながらも、独自の実験的試みが繰り広げられました。特に1960年代のニューヨークでは、映像作家、詩人、音楽家、美術家など分野を超えた交流が活発化し、フリージャズ、ポップアートなどの様々な文化的潮流と共鳴しながら、アンダーグラウンド映画のムーブメントが形成されました。既成概念に縛られないラディカルな作品が次々と誕生したのです。
このような映画の重要性を誰よりも提唱し続けたのが、詩人で映像作家のジョナス・メカス(1922–2019)です。1949年、難民としてリトアニアから米国に渡ったメカスは、戦争で粉々になった希望を拾い集めるかのように、こうした作品を擁護する活動を仲間とともに展開しました。1955年に映画雑誌「フィルム・カルチャー」を創刊、1961年には個人映画の配給組織「フィルムメーカーズ・コーポラティブ」を設立。さらに、作品の保存・研究・上映を恒常的に行うことを目的としたフィルムアーカイブの設立に奔走します。そして1970年、映画を芸術として扱う初の美術館と銘打ち、メカスをはじめジェローム・ヒル、P・アダムス・シトニー、スタン・ブラッケージ、ピーター・クーベルカらによって「アンソロジー・フィルムアーカイブス」が設立されました。
アンソロジー・フィルムアーカイブス 外観
本企画では、ビート・ジェネレーションとアンダーグラウンドを繋ぐ重要人物でありながら29歳で夭折したロン・ライスによる作品や、再評価が期待されるマージョリー・ケラーの作品など、アンソロジーの復元によって蘇った作品だけでなく、映画の定義を批評的に問い直す先鋭的なプログラムを中心に、アメリカ実験映画、個人映画、インディペンデント映画を紹介します。映像表現の可能性を模索した作品群の上映を通じて、映像メディアに囲まれた現代に新たな視点をもたらす機会となれば幸いです。
『チュムラム』
『6つの窓』
特集上映「アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ」
https://www.nfaj.go.jp/film-program/anthology202601/![]()
2026年1月15日(木)-2月8日(日)
上映日時など詳細は、国立映画アーカイブホームページにてご確認ください。
国立映画アーカイブ/長瀬記念ホール OZU(2階)
〒104-0031 東京都中央区京橋 3-7-6
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- 火曜日~日曜日11:00am-9:00pm
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- 観覧料
- 一般¥1300/65歳以上¥1100/大学生・高校生¥700/中・小学生・障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)・国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズ・未就学児・優待¥500
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