2026年3月31日
下村観山 新時代にふさわしい絵画を求めて
東京国立近代美術館主任研究員・中村 麗子
明治から昭和初期にかけて活躍した日本画家・下村観山(1873-1930)は、東京美術学校(現在の東京藝術大学)に第一期生として入学、その後思想家の岡倉天心が設立した絵画研究団体・日本美術院に参加しました。美術院では天心による指導のもと、盟友の日本画家・横山大観、菱田春草らとともに、近代という新時代にふさわしい絵画を研究しました。1903(明治36)年からは2年にわたり、日本画家初の文部省留学生としてイギリスに留学しました。
《弱法師》1915年、東京国立博物館蔵(重要文化財) Image: TNM Image Archives
(前期展示3/17~4/12)
作品《弱法師》は能の「弱法師」を主題とした作品です。能「弱法師」のクライマックスシーンを描いています。根拠のない噂を信じた父親に家を追い出され、盲目となってさまよう俊徳丸は、天王寺にたどり着きました。折しも寺では、入り日に向かって祈ることで極楽浄土を願う「日想観」が行われており、俊徳丸も参加します。祈ると、かつてまだ目が見えた頃に親しんだ、難波の浦の情景が心の中に広がり、思わず感激の笑みを浮かべるのでした。梅の木の奥に手を合わせて立つのが俊徳丸で、左には沈みゆく日輪が大きく描かれています。梅の木の根元の卒塔婆には仏の姿が描かれ、極楽浄土を暗示しています。盲目の俊徳丸の表情が細かい部分まで丁寧に描かれており、観山が若い頃から優れた技術力で高く評価されてきたことを示す作品です。
《魚籃観音》1928年、西中山 妙福寺蔵(通期展示)
この《魚籃観音》には、三十三観音のひとつ・魚籃観音が、魚のかごを持った女性の姿で描かれています。観音と周囲の男性の体は、絵具の濃淡によって、体の凹凸や筋肉を意識して描かれています。日本の伝統的な主題を、留学で学んだ西洋絵画の写実的な表現で描いた作品です。観音の顔はイタリア・ルネサンスの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》にそっくりですが、その理由は謎のままです。
《獅子図屏風》1918(大正7)年、水野美術館蔵(後期展示4/14~5/10)
この《獅子図屏風》は4頭の獅子を描いています。獅子の青緑色や巻き毛風の毛並みは、文殊菩薩の乗り物の獅子を思わせますが、彼らはまるで本物のライオンのような仕草でくつろいでいます。観山は実際のライオンの姿を意識してこの絵を描いたのでしょう。観山は日本や中国の古い絵画をよく研究しましたが、このように、文殊菩薩という伝統的な仏教絵画を現代風にアレンジしたところに、観山画の新しさを見て取ることができます。
下村観山展
2026年3月17日(火)~5月10日(日)
https://www.momat.go.jp/exhibitions/567![]()
- 観覧料:
- 一般 2,000円(1,800円)
大学生 1,200円(1,000円)
高校生 700円(500円)
( )内は20名以上の団体料金、いずれも消費税込み。
中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。
本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展 「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。
東京国立近代美術館
- 住所
- 〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1
- ホームページ
- お問合せ先
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋駅」 1b出口より徒歩3分
東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」4番出口より徒歩15分
東京メトロ半蔵門線・都営新宿線・三田線「神保町駅」A1出口より徒歩15分 - 開館日・時間
- 火曜日~日曜日 10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00)
※入場は閉館の30分前まで - 休館日
- 毎週月曜日(ただし5月4日は開館)
