2026年10月27日
夢二の全貌に迫る展覧会「竹久夢二 時代を創る表現者」
東京国立近代美術館研究員 横山 由季子
東京国立近代美術館で来年1月11日まで開催中の「竹久夢二 時代を創る表現者」展は、竹久夢二(1994-1934)の全貌に迫る、過去最大規模の展覧会です。
夢二は画家、詩人、ジャーナリスト、デザイナー、イラストレーターなど、いくつもの顔をもつ表現者として、明治の終わりから昭和のはじめにかけて活躍しました。
竹久夢二《黒船屋》 1919(大正8)年 竹久夢二伊香保記念館
挿絵画家として出発した夢二は、その生涯で数多くの日本画も手がけました。代表作である《黒船屋》が、同作を所蔵する竹久夢二伊香保記念館の外の展覧会に出品されるのは、実に約40年ぶりのことです。
黒猫を抱いて座る着物の女性を描いたこの作品は、戦後、夢二の展覧会や画集で繰り返し紹介されてきただけではなく、小説や舞踊、演劇、映画、漫画などによるオマージュ作品や二次創作も生み出しました。また、日本の歴史書や教科書にも掲載されるなど、大正時代を象徴する作品として、今日まで知られています。
竹久夢二《秋のいこい》 1920(大正9)年 夢二郷土美術館
また、同じく円熟期の代表作である《秋のいこい》は、色づいたプラタナスの黄色や、ベンチに腰掛けた女性の着物の紫、蝙蝠傘の青、信玄袋(手提げ式の巾着袋)の黒など、色彩のコントラストが印象的な作品です。
夢二がしばしば描いた憂いのある女性像や、江戸情緒を残す農村や港町の風景からは、急速な近代化が進む時代に、失われつつあるものへと向けられた哀惜の念が感じられます。そうした作品に宿る抒情が、当時の人々の心を捉え、夢二は時代の寵児となっていきました。
竹久夢二《港屋絵草紙店(港屋版)》 1914(大正3)年 金沢湯涌夢二館
他方、夢二はデザインの分野でも才能を発揮します。1914(大正3)年に日本橋に開店したセルフプロデュースの店「港屋絵草紙店」では、自らがデザインした千代紙や便箋、絵封筒、半襟、手拭い、うちわなどを販売しました。植物や幾何学などのモチーフを大胆に配置したそのデザインは、斬新さと素朴さ、新しさと懐かしさが入り混じっており、若い女性を中心に人気を博します。
生活と結びついた芸術を世に送り出そうとした夢二は、流行に流されるのではなく、創意をもった生活をすることを人々に呼びかけました。その姿勢は、図案や文案を請け負う「どんたく図案社」や、手による産業を目指した「榛名山美術研究所」など、実現しなかったプロジェクトにも引き継がれています。
左:千代紙「桜草」(港屋版) 1914–1916(大正3–5)年 竹久夢二伊香保記念館
右:半襟図案原画[赤い実と小鳥] 1914–1916(大正3–5)年 竹久夢二伊香保記念館
このたびの展覧会では、夢二の自著をはじめ、書籍の装幀や雑誌のイラストレーション、ジャーナリストの視点で関東大震災を記録したスケッチなど、ジャンルを横断しながら活躍した夢二の仕事を余すところなくご紹介します。
初期の「夢二式」の女性像から晩年の「モダンガール」まで、時代と並走しながら、流行や社会現象を生み、人々に愛された表現者、夢二。彼が生きた激動の時代に思いを馳せつつ、時代が移り変わっても色褪せることのない、レトロでモダンな夢二の世界にぜひ浸ってみてください。
展覧会名:竹久夢二 時代を創る表現者(英語タイトル:Takehisa Yumeji—An Artist Who Defined His Era)
会期:2026年10月23日(金)~2027年1月11日(月・祝)
〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1
- 開館時間:
- 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)入館は閉館の30分前まで
- 休館日:
- 月曜日(ただし11月23日、1月11日は開館)、11月24日、年末年始(12月28日~1月1日)
- 会場:
- 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
- 主催:
- 東京国立近代美術館、毎日新聞社
- 協賛:
- DNP大日本印刷、JR東日本、関電工
- 観覧料:
- 一般 2,100円(1,900円)、大学生 1,200円(1,000円)、高校生 700円(500円)
※いずれも消費税込 ※( )内は20名以上の団体料金、ならびに前売券料金
※中学生以下、障害者手帳をご提示の方とその付添者(1名)は無料 ※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4 - 2F)もご覧いただけます - 問い合わせ:
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 美術館サイト:
- https://www.momat.go.jp/exhibitions/570

