2014年5月14日
蛇を担いで厄ばらい~間々田のジャガマイタ~
小山市立博物館 小川 聖
祭りとは,時を定めてやってくる神仏に様々な願い事をするものですが,同時に心身の再生復活を図る時でもあります。人間は繰り返し単調な生活ばかり続けていると,心身共に活力が失せてしまうため,仕事を休み,御馳走を食べて英気を養う絶好の機会が祭りだったのです。一方,祭りは大きくなればなるほど,氏子たちにとって意志の疎通,力の結集は欠かすことができず,同じ氏子であることの絆意識を高めます。しかも祭りにどれだけ力を注ぐことができるかは,その地域の経済力や人々の気力など,つまりは地域力にほかならないのです。
栃木県小山市間々田地区で毎年5月5日のこどもの日に行われる祭りが,平成23年に国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」として選択されました。「間々田のジャガマイタ」とよばれるこの祭りは,古く江戸時代に端を発したといわれ,悪疫退散・五穀豊穣を祈願する祭り行事です。真竹を芯にして稲わらを巻き付け,その上をシダで覆って飾りたてた長さ15メートルの蛇体が7体,間々田八幡宮境内にある池の中で水しぶきを上げながら雨乞いをし,厄よけのために各町内を練り歩く光景は実に勇壮であります。

蛇よせ
この祭りは,今では間々田地区を代表する一大行事となり,多くの見物客を集めるほどになりましたが,今日に至るまでには幾多の盛衰を繰り返してきました。祭りの様子がうかがえるのは江戸時代末期頃からで,当時日光街道の宿場町であった間々田宿の上坪と下坪で1匹ずつの蛇を作り,終了後には悪疫の侵入を防ぐために宿境に放置しました。それが明治以降に町内が増えて7匹となり,実施日も旧暦4月8日だったものが,担い手の子供たちに合わせて5月5日と変更されました。また八幡宮境内に蛇が集合する「蛇寄せ」や,池での水のみが新たに加えられ,隣接する乙女地区などでも行われるようになりました。しかし,蛇を迎えるためにショウブや藤の花を戸口に飾ったり,厄よけや雨乞いのために行うという基本的な考え方に変更はありません。これは祭りに込めた人々の思いや願いが,今日まで変わることなく息づいている証拠であり,この祭りが地域の伝統や文化創出に大きく関わってきた証しであると言えると思います。

水呑み
文化は,人々の生活の中から生まれ,継承されていくことにより,今に息づいています。それが地域で共に生活していく人々を一つにまとめる力となり,新たな地域文化の向上に大きく寄与するものと思われます。
今後も「間々田のジャガマイタ」が伝統文化として継承され,未来を担う子供たちの「ふるさと間々田」を愛する心を育んでいくとともに,地域の活性化に必ずや寄与するものと確信しています。