2016年10月17日
吉良川御田八幡宮神祭のお舟・花台行事
室戸市教育委員会 文化財調査員 藤原 あゆみ
室戸市の各地にある神社では,四季時に行われる大祭の中でも秋祭りが最もにぎわいます。地元では親しみをこめて,この秋祭りを「神祭」と呼び,地域住民の重要なイベントとなっています。

御田八幡宮にて
この室戸市吉良川町にある御田八幡宮は,室戸市内でも特に祭りへの参加人数が多く,華やかでにぎわいのある大きな祭りのうちの一つとなっています。
室戸市内の神祭は,宵宮(本祭前日)・本祭の日程からなり,本祭当日には,式典のあとそのお神輿が浜宮へ向かう,御神幸といった形式で行われています。
御田八幡宮には,それに加えて高知県東部沿岸に残っている数少ない,「花台」と呼ばれる山車が現存し,現在も伝統ある奉納行事として注目されています。

吉良川の町並みを練り歩く,花のついた花台
花台は,吉良川町内特定の地域住民によってつくられた宿と呼ばれる組織(上町・東町・中町・西町)に各1基ずつあり,その花台に,各宿の名称がついた提灯が約120個付けられています。また2年に一度「花」とよばれる竹ひごと和紙でできた造花をつけたものを,花台の上部四面に約1000本付けます。この花は,隔年8月頃から各町それぞれで作られています。

竹ひごと和紙で作られた「花」
この4基の花台は上町・東町・中町・西町の順番で町を練り歩きます。これは,町がこの順番でできたことが由来であるといわれ,この順番は現在も堅く守られています。

「お舟」と呼ばれる山車
また,この花台とは違った位置づけとして「お舟」と呼ばれる山車もあります。お舟は花台とは全く違い,舟に台と車輪を付けたもので,大きさも実際の屋形舟と変わらないぐらいの大きいものになります。傍士と呼ばれる地区がお舟を管理しており,本祭当日に,花台4基がこのお舟を迎えに行きます。なぜお舟を迎えにいくのか。いくつか理由はありますが,まずなぜ舟なのかという点では,八幡宮から浜宮へ神様をお神輿ではなくお舟に移して御神幸していたことが要因となっております。ではなぜ傍士地区へ花台が舟を迎えに行くのか,という点に関しては歴史を遡ると,過去に吉良川を統制していた安岡弾正(地元武将)の城がこの地区にあったと伝えられており,城主を大事に思うことから,この地区にあるお舟を迎えに行くといった風習になったのではないかと考えられています。
両日ともに夜,八幡宮境内にて花台4基それぞれが,境内で舞う奉納行事があります。花台を担いでゆっくりと回る笹舞のあとに,担ぎ手が走って勢いよく回転するチョーサイ舞があります。真っ暗な中に,ろうそくで灯された多くの提灯が勢いよくまわり,輪のようになって幻想的な世界が広がります。
花台に飾られていた花は,縁起がいいものとして数本いただき輪にして家に飾ります。
この行事は「吉良川御田八幡宮神祭のお舟・花台行事」として,平成26年3月10日に「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」 として国より選択されました。