2014年5月15日
SNSを利用して「博物館のお気に入り」を発信・交流
一般財団法人 北海道開拓の村 事業課長・学芸員 細川 健裕
近年はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用して博物館の展覧会やイベントなどを広報する館園が増えています。今回は,大学生を対象に博物館の楽しさを共有するツール(道具)としてSNSを利用した教育実践を御紹介します。
北海道開拓の村施設内
北海道開拓の村はその名のとおり,北海道開拓が強力に推し進められた明治から昭和初期に建築された建造物を移築復元・再現し,生活や産業に関する資料を展示した野外博物館で,近代化の中暮らしの変遷を体感し学び楽しむことのできる施設として,多くの方に利用されてきました。しかし,開村から30年を経た現在,展示を実体験とリンクして懐かしみ楽しむことのできる世代は減少しており,市民の共有する話題に取り上げていただくためには新たな視点と情報交流が必要となっています。
My携帯を手にお気に入りのフォトジェニックな場面を探索
今回の取組は,多くの登録者数を誇るSNSサイト「Facebook」と参加者のカメラ機能をもつ携帯電話を利用して試行したものです。活動の流れは,自らのお気に入りを探して「ポスター」を作ることを課題に設定し,施設内で出会う資料を肯定的に捉え「こんな風に見える。こんな場面があった。」といった他者への紹介の視点で撮影。キャッチコピー等を添えるなどして完成した作品を施設のページで紹介し,その思い出や視点を共有します。「博物館に行った」「資料を見た」という行動の自己完結で終わりがちな博物館園の利用が「資料を見る→興味・関心をもつ→理解する→伝える」というつながりを持ち,いつもは何げなく通り過ぎる資料に対し,利用者が自然 と「主体的」に向き合うようになる無理のない仕掛けがポイントです。
また,個人ページにおいて評価機能である「いいね!(nice!)」や「シェア」機能による情報拡散,イメージ共有に無責任に頼るのではなく,施設のページだからこその多様な利用者層の情報アクセスが促進され(Facebook登録者以外も閲覧可能),掲載内容の確認訂正や情報付加によって,投稿者にも学びの機会と他者の反応を見る楽しみがフィードバックされます。
閲覧者からの評価と情報拡散
もちろん,こうした情報がストックされることで百人百様の博物館の魅力が蓄積され,常設型博物館の課題である見学ルートの新規提供にも役立つ可能性があります。重要性は認識していてもなかなか有効な促進手段が見いだせない“口コミ”を,可視化して活用できるという点でも,汎用性の高いサービスにつながるものと考えています。
事実,学生からはお互いの投稿作品を見ることで「インスピレーションが刺激された」「ほかの展示についてもじっくり見たい」といった声が聞かれ,博物館を楽しもうというモチベーションの向上をもたらしたようです。
シェア機能による情報の付加と拡散
まだ試行段階の取組ですが,より参加しやすく,ストレスの少ない博物館の魅力を共有するツール(道具)にカスタマイズすることによって,利用者・施設そして情報を求める市民の出会いの場となることを期待し,その先にある博物館でのオリジナルとのリアルな出会いを楽しみにしています。
北海道開拓の村
〒004-0006 北海道札幌市厚別区厚別町小野幌50-1
- 問合せ
- 011-898-2692
- 交通
- JR「新札幌」駅(2階)・地下鉄東西線「新さっぽろ」駅(地下)から
新札幌駅バスターミナル(1階)北レーン10番のりば発JR北海道バス「開拓の村」行に乗り換え終点下車すぐ(約15分) - 開館時間
- 5月~9月 9:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
4月,10月~3月 9:00~16:30(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日(5月~9月は無休)
- 観覧料
- 一般830円,大学生・高校生610円
※中学生以下・65歳以上の方,障害者手帳保持者は無料です。
(65歳以上の方は年齢を確認できるものを御提示ください)
※高校生で次に当てはまる場合は無料です。
土曜日・こどもの日・文化の日の利用,10名以上の団体 - ホームページ
- http://www.kaitaku.or.jp