2014年6月20日
かるたで発見!すみだのいいね!
-すみだ郷土かるたを利用した地域学習での試み-
すみだ郷土文化資料館 専門員 高塚明恵
墨田区立すみだ郷土文化資料館は,東京都墨田区にある地域博物館です。平成10年の開館以来,展示やイベントを通して地元地域に関わる歴史や文化を紹介してきました。「すみだ郷土かるた」は資料館が平成14年に作成しました。区内の小中学生を主な対象として,墨田区の名所や行事,建物などをテーマに句を募集し,応募があった約4700句から46句を選定しかるたに仕立てたものです。このかるたは一般に販売しているほか,小学生の地域学習の教材としても利用されています。
すみだ郷土かるた
小学校から郷土かるたの利用依頼があると,資料館職員と資料館はかせ(資料館を利用する子どもたちのお手伝いをするボランティア。以下はかせ)が出かけていき【読手】や【審判】になって,子どもたちとかるた遊びをします。【読手】は会場全体で一人,子どもたちを少人数の班に分け,それぞれに【審判】が入ります。
自己紹介する資料館はかせたち
我々大人側には郷土かるたを通して少しでも墨田区のことに興味を持ってほしいという目論見があります。しかしかるたは,札を取るスピードと枚数を競う遊びです。おのずと,子どもたちにとっては句の内容など二の次になり,通常のかるた遊びの域を出ないものになりがちでした。
そこで新しく「札を取ったらその句を審判のはかせに読み上げる」というルールを設定することにしました。音読すれば自分がどんな札を取ったか印象に残りやすいし,5・7・5のリズムにも親しめると考えたのです。ところが,結果は期待以上でした。子ども自身が句を声に出して読むことによってその内容が注目され,審判のはかせと子どもたちとの間に,句に詠まれている地域のことについて自然と対話が生まれたのです。それぞれの班で会話が盛り上がり,読手が次の句に移るタイミングに苦労するほどでした。
かるた中にそれぞれの班でおしゃべり
プログラム終了後の反省会では,はかせたちから「新ルールがきっかけとなり子どもたちと句の話をする流れになった」との声が多く聞かれました。今まで以上に,子どもたちとたくさん会話し,活発に交流することができて,大きな手ごたえを感じたようです。
さらに,これまで子どもたちからは,主に取った枚数や取れなくて悔しかったことなどの感想が寄せられていたのですが,新ルール後は「キラテイ(吉良邸)とえこういん(回向院)のことはわすれません」「一番心にのこったのは勝海舟のかるたでした」など,句の内容に触れている感想が多くなりました。また,自主的に,墨田区のことを題材にしたオリジナルのかるたを作り,はかせに贈ってくれた子どもたちもいました。
子どもが作ったスカイツリーのかるた
今回の試みで,少しの工夫でも,子どもたちの反応が変わり多様な対話を生み,地域への興味を引き出すきっかけにできることがわかりました。墨田区は東京という大都会の片隅に位置しており,区の地域性を意識することは難しい土地柄と言えますが,墨田区の博物館として様々な世代との出会いや交流の場を提供し,子どもたちが楽しみながら,自分たちの生活する地域に目を向けられるような工夫を,心がけていきたいと考えています。
すみだ郷土文化資料館
〒131-0033 東京都墨田区向島2-3-5
- 問合せ
- 03(5619)7034
- 交通
- 東武伊勢崎線とうきょうスカイツリー駅より徒歩7分・都営浅草線本所吾妻橋駅より徒歩8分
- 開館時間
- 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
- 休館日
- 毎週月曜日・毎月第四火曜日(いずれも,祝日の場合は翌日)
- 観覧料
- 一般100円・団体(20名以上)80円
中学生以下と身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・愛の手帳をお持ちの方は無料 - ホームページ
- https://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/