2015年10月5日
ビュフェこども美術館
~地域での子育てに美術館ができること
ベルナール・ビュフェ美術館 学芸員 井島真知
黒い直線とモノトーンの色彩により独自の画風を築いた画家として知られるベルナール・ビュフェ。その作品を約2000点収蔵し,展示しているのがベルナール・ビュフェ美術館です。

ビュフェの作品:肘をつく男(1947年)/
ガスコンロのある静物(1949年)
一人の画家の作品のみを展示する個性の強い美術館ですが,来館者の約12パーセントが未就学の幼児です。幼児が必ず保護者と一緒に来ることを考えれば,来館者の3割近くが幼児とその保護者ということになります。これは,館内に「ビュフェこども美術館」が併設されているからなのです。

ビュフェこども美術館
美術館のある静岡県長泉町は,出生率が全国平均より高い町として知られています。ビュフェこども美術館は,子供が多く暮らす町の美術館として,親子で遊びながら美術に親しむ場を提供しようと,1999年にオープンしました。主に幼児から小学校低学年の子供とその保護者を対象としています。くつをぬいで木の床にあがると,木の感覚を全身で味わえる木のボールプールや,様々な木でできた「蝕の引き出し」など,森に囲まれた美術館らしい雰囲気です。その他,ビュフェの作品に登場する人物の服を着てみるヘンシンコーナーや,身の回りの世界へ子供たちを誘う絵本のコーナーなど,親子でゆっくり過ごせる空間が好評です。子供たちは全身の感覚をつかって,作品やモノと関わります。子供たちが様々な感覚をつかって,また,想像力をつかって,安心していろいろと試してみることができる環境を大切にしています。

ワークショップで葉っぱをつくっては足していく「生命の樹」/
木の感触とかたちを楽しむ「蝕の引き出し」
こども美術館は,子育てに関わる大人にとっての意味も大きいと感じています。「子供と家にじっといるより,美術館にくると気が休まる」など,こども美術館に来る理由には,保護者のニーズも大いにあるようです。「こども美術館で祖父に子守をまかせて展示を見にいった」などの声にみられるように,保護者自身の興味関心を満たす工夫も必要でしょう。そこで,企画展「ルドルフ・シュタイナーからのメッセージ」では,シュタイナーが芸術とも深く結びついた教育の思想でも知られることから,企画展本体とは別に,こども美術館にシュタイナー教育のコーナーを設けてみました。すると,子供を遊ばせながら熱心に見入ったり,関連図書を手に取ったりする保護者も多く見られました。子供と親を分離することになってはいけないと思っていますが,こども美術館でも保護者への働きかけをより積極的に行うことによって,保護者が新しい視点で美術や子供の成長に関われるようにしていきたいと考えています。

こども美術館でのシュタイナーコーナー
シュタイナー教育での実践や考え方を紹介
1999年の開設以来,こども美術館の存在を通じて,美術館が子供を歓迎していることを表明してきました。15年が経過してこども美術館の存在が定着してきた中,地域での子育てに美術館としてどのように参加できるのか,保護者や子育てに関わる人たちとの対話や働きかけをより深めていきたいと考えています。
ベルナール・ビュフェ美術館
〒411-0931 静岡県長泉町東野クレマチスの丘515-57
- 問合せ
- (055)986-1300(代表)
- 交通
- 【電車の場合】 東海道線「三島駅」下車,北口(新幹線口)発,無料シャトルバスあり
【お車の場合】 東京方面より:東名裾野I.C.よりR246経由,沼津方面へ10 Km
名古屋方面より:新東名 長泉沼津I.C.あるいは東名 沼津I.C.より伊豆縦貫道(東駿河湾環状道路)へ,
長泉I.C.出口R246右折/新東名 長泉沼津I.C.より5 km - 開館時間
- 1月 10:00~16:30
2・3月 10:00~17:00
4・5・6・7・8月 10:00~18:00
9・10月 10:00~17:00
11・12月 10:00~16:30
(入館は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週水曜日(祝日の場合はその翌日),年末年始
- 入館料
- 大人 1000円(900円) 高・大学生 500円(400円) 中学生以下 無料
※( )は,20名様以上割引 - ホームページ
- www.buffet-museum.jp/