2016年8月15日
丹波焼の里の新たな挑戦~地域ぐるみで創る里の魅力~
兵庫陶芸美術館丹波焼の里活性化専門員 山田貴一

修復後の丹波焼最古の登窯
日本六古窯の一つ,800年の伝統を受け継ぐ丹波焼。山里の集落の中に約60軒の窯元が立ち並び,それを一望する里山の麓に白壁が一際目立つ兵庫陶芸美術館が開館して10年がたちます。
丹波焼の里は,やきものについて「観る」「学ぶ」「体験する」「買う」が一度に楽しめます。美術館では様々な陶磁器と出会い,立杭陶の郷では陶芸体験や丹波焼のショッピングを楽しみ,窯元群では登り窯の見学や窯元の工房巡り,路地歩きを楽しみながら作家との会話も楽しめます。なかでも,窯元群の中央部には,築120余年の丹波焼の里では最も古くて長大(47m),今も現役で活躍する兵庫県指定民俗文化財の「丹波焼最古の登窯」があります。
しかし,長年の使用や阪神・淡路大震災による傷みが激しく,ここ数十年は三分の一程度を使って窯焚きされていたものを,里の新たなシンボルとして修復しようとの声が高まり,地域の団体が連携して,平成26年から2か年をかけて大修復と里の活性化に取り組みました。
この最古の登窯の復興には,三つのねらいと夢がありました。

まくらづくり
一つ目は,窯の修復を通して経験豊かな窯元から若手の窯元に,国の「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」に選択されている丹波の登り窯の伝統的な築窯技術を引き継ぐこと。二つ目は,修復作業を一般の人々に公開し,登り窯や丹波焼のことを知ってもらうこと。三つ目は,地域が一体となって市民の方々と一緒に汗して貴重な地域資源を残し,守り,活かしていくことを共感し合いながら取り組み,一人でも多くの丹波焼の理解者や応援団を増やしていくことでした。

まきづくり
今回の登り窯の修復には,窯を築くまくら(日干しレンガ)づくりや薪づくり,築窯の道具づくりなどに,近畿各地から延べ約200名の子供や市民が参加して一緒に汗しながらの作業に取り組み,まくら2000個,薪3000束を完成。参加した子供の口からは「僕が造ったまくらが100年先まで窯の一部として残っていくと思うとうれしい」と夢を語り,築窯の手伝い入ったボランティアは「窯元さんと一緒に登り窯の修復に携われて感激。初めての経験で,この窯に火が入るのがたのしみ。窯元さんとの交流で一層丹波焼が好きになった」と,また若手の窯元は「経験豊かな先輩窯元の方からこれまでにない貴重な話と体験をさせてもらった。この作業に関わることができ本当に良かった」などの声が聴かれました。

登窯の修復作業
昨年11月21日から昼夜を通して4日間行われた窯焚きには,西日本各地から約3000人の見学者が訪れ,見学者の案内や窯元巡りなどにボランティアが活躍し,精一杯のおもてなしを尽くしました。
2年間の登り窯の修復活動でつながった多くの人の輪。この交流の輪こそがこれからの丹波焼の里の大きなエネルギー源といえます。
丹波焼の里が更に元気になることを目指して,今年も最古の登窯を11月18日~20日の3日間,子供から大人まで陶芸に関心を寄せる人々の作品を詰めて,窯焚きをします。
期間中はすべて公開します。一人でも多くの方との交流の輪を広げるために。

窯焚きのクライマックス
兵庫陶芸美術館
(住所)〒669-2135
兵庫県篠山市今田町上立杭4
- 問合せ
- 079-597-3961
- 交通
- ・JR福知山線「相野駅」下車。駅前より神姫グリーンバス「兵庫陶芸美術館行」,「こんだ薬師温泉行」又は「清水寺行」乗車15分「兵庫陶芸美術館下車」
・舞鶴若狭自動道「三田西IC」より15分。中国自動車道「滝野社IC」より国道372号を東へ30分。 - 開館時間
- 【4~10月】10時~19時。ただし7・8月の特別展開催中の金・土及びゴールデンウィーク期間中(4/29~5/5)は21時まで。
【11~3月】10時~18時
※入館はいずれも閉館時間の30分前まで - 休館日
- 毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は翌平日)
- 入館料
- 展覧会により異なります。ホームページ等で御確認ください。
- ホームページ
- http://www.mcart.jp