2017年1月13日
観察・推理・確かめる力を引き出すワークショップ
「民家園で自由研究!糸と糸車のひみつ」
川崎市立日本民家園 学芸員 関 悦子
「みなさん,昔話『たぬきの糸車』を知っていますか?たぬきが糸を紡いで恩返しをする話だね。でも,たぬきはどうして糸を紡げたのかな?初めてなのに糸車を使うことができたのかな?実はね…,たぬきが糸を紡げるようなるまでには,こ~んなお話があったんだって。」
平成28年夏,日本民家園で行われたワークショップ「民家園で自由研究!糸と糸車のひみつ」は,このようにして始まりました。参加したのは,小学3年生~6年生10人です。糸の仕組みや糸車の構造を理解しようという内容ですが,特に重視したのは観察や推理・実験を通して理解に到達するプロセスです。

ワークシート(表紙)と導入に使った昔話『たぬきの糸車』オリジナル漫画
ワークショップは,昔話『たぬきの糸車』(一部創作を加えた民家園オリジナル昔話)に沿って展開します。たぬきが糸を観察する場面では,子供たちにも糸とルーペを渡して観察をします。「糸はねじねじしてる」「ほぐすとたくさんの細い糸ができる」続いて,たぬきが綿を糸状にしようと実験をする場面では,子供たちも綿を手に取って実験をします。「たくさんねじると綿がちぎれにくい」「でも手をはなすとねじれが戻っちゃう」たぬきが糸車を観察する場面では,実物の糸車を前に子供たちもスケッチをして観察をします。「糸車の大きい輪っかと針は,逆方向にまわる」「針の方が早くまわる」はじめは戸惑っていた様子の子供たちでしたが,スタッフのサポートで徐々にコツをつかみ,活発に発言するようになりました。

糸車をよ~く観察中。スタッフが観察をサポート。
講座の終盤,いよいよ糸車での糸紡ぎ実演と体験です。これまで観察や実験をやってきた子供たちの表情は真剣そのものです。付添いの保護者も興味津々で身を乗り出して,スマートフォンで撮影したりメモを取ったり…。子供たちの糸紡ぎ体験を指導したスタッフからは,「糸や糸車の構造を事前に理解しているので,飲み込みがすごく早い」と驚いていました。ただ糸紡ぎを体験するのではなく,段階を踏んで糸車を構造から理解するという今回の取り組みは,どうやら成果があったようです。最後に子供たちは,自らの力で物事を検証したことをたたえた修了証と自由研究をまとめるためのワークブックを受け取って帰っていきました。

糸車での糸紡ぎ実演。糸ができる様子をじっくり見て確かめる。

実際に糸車を使ってみる。体験して分かったこともカードに書き留める。
今回の事業は,ミュージアム・エデュケーター研修を受講したスタッフで企画しました。事業に関わるスタッフ全員に,ねらいやプロセスを事前に説明し,シミュレーションも行います。更に事業終了後,参加者数や進行時刻などの記録を作成し,内容・準備・人員など8~9項目で気づいた点を書き起こして,スタッフ全員で振り返りを行います。ひとつの事業を通じて,スタッフ同士で教育普及事業のノウハウを共有していくことも心がけています。
川崎市立日本民家園
(住所)〒214-0032
神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-1
- 問合せ
- 044-922-2181
- 交通
- 小田急線「向ヶ丘遊園駅」南口から徒歩約13分
- 開園時間
- 火曜日~日曜日 9:30~17:00(11~2月は9:30~16:30)
入園は閉園30分前まで - 休園日
- 月曜日(祝日の場合は開園),祝日の翌日(土・日曜・祝日の場合は開園),年末年始
- 入園料
- 一般¥500(400),高校生・大学生・市外在住65歳以上(要証明証)¥300(240),中学生以下・市内在住65才以上(要福寿手帳提示)無料 ※( )内は有料20名以上の団体料金(要事前連絡)
- ホームページ
- http://www.nihonminkaen.jp/