2017年2月13日
より深い鑑賞体験へ!
たましん御岳美術館 「スケッチの日」の取組から
公益財団法人たましん地域文化財団 美術資料室
学芸員 杉本 藍
「描き始めるととにかく楽しいです!」
「スケッチの楽しさを知り,単に鑑賞するだけの楽しさから,更に楽しさが広がったように思います。」
「スケッチの日のイベントから気軽に絵画に興味を持つ人が増えると素敵だと思いました。」
「スケッチの日」事業は,たましん御岳美術館の来館者を対象に,御岳渓谷の風景を楽しみながら気軽にスケッチを体験していただくイベントで,4,8,11月の年3回各回2日間実施しています。この取組は開館10周年を記念して始まり,以来計42回延べ約1,500名の方々が体験しています。希望者は入館料のみでどなたでも参加でき,水彩道具や水彩用紙など必要な画材を貸し出しており,仕上げた作品はそのまま持ちかえることができます。また,希望の方には学芸員によるワンポイントアドバイスも行っていますが,ここでのスケッチの目的は写実的にうまく風景を描くことではなく,手を動かすたのしさを知っていただくことにあります。

参加者の作品 春

参加者の作品 夏

参加者の作品 秋
「スケッチの日」イベントに参加されたお客さまの作品。
春,夏,秋と様々にかわる季節をたのしみながら描かれているようです。
当美術館は,1993年たましん歴史・美術館(JR国立駅南口前)の分館として開館し,東京都立川市に本店を置く「多摩信用金庫」を設立母体とする公益財団法人たましん地域文化財団が運営しています。東洋古陶磁,近代洋画,多摩の作家(絵画・版画・彫刻・工芸)の約3,000点にのぼる所蔵品から,様々な企画構成で年2回のテーマ展示を行っています。なかでも,約2,500点所蔵している倉田三郎の油彩,水彩の作品がコレクションの大半を占めており,併設の倉田三郎記念室では「旅の素描」というテーマで,油彩や水彩の作品を毎回15点ほど展示公開しています。

倉田三郎記念室 展示風景
倉田三郎記念室では,油彩や水彩の作品のほか,
旅先の写真や書簡などの資料も展示公開しています。
倉田三郎(1902-1992)は東京・市ヶ谷に生まれ,東京美術学校師範科を卒業後,春陽会会員となります。府立二中(現,都立立川高等学校)の教諭を経て東京学芸大学教授となり,教授在職中に国際美術教育会議(INSEA)日本代表としても活躍した,画家であり美術教育者です。「多摩地域における文化貢献のひとつの在り方として美術館を!」と提唱され当財団の設立に尽力された方でもあります。なにより,日本全国三府四十三県を実際に歩き,また世界40か国をめぐり,その場所の空気を肌で感じながら描くことを大切にしていました。

受付の様子
参加者どうしでできあがった作品を共有してもらえるよう,
作品は写真に撮らせていただき,受付横に掲示します。

体験の様子
同じ場所から描いても,遠くの山並みを入れたり,
川をメインにしたりと参加者自身の風景が切り取られます。
「スケッチの日」は,倉田三郎の「描くことの楽しみ,写生することの楽しみ,絵画に親しんでもらうことの楽しみ」の考え方を理想として,実際に体験していただくために始められた生涯学習の事業です。この「スケッチの日」事業は,美術館として「描くこと」と「みること」との接点を見いだし,より深い鑑賞体験へつなぐ一つの取組です。この取組から美術館がより身近な存在となり,生活の中の一部になればと願っています。
たましん御岳美術館
(住所)〒198-0173
東京都青梅市御岳本町1-1
- 問合せ
- 042-574-1360(公益財団法人たましん地域文化財団)
- 交通
- JR青梅線「御嶽駅」より御岳渓谷遊歩道を上流へ約1.5 km[JR中央線「新宿駅」より「御嶽駅」まで約90分※専用駐車場,大型バス専用駐車場あり(御利用の際はあらかじめ御連絡ください)]
- 開館時間
- 午前10時~午後4時(4月~10月は午後4時半まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
- 観覧料
- 一般¥500[400] 高・大生¥400[300] 小・中生¥300[200]
※[ ]内は20名様以上の団体 - ホームページ
- https://www.tamashin.or.jp