2017年11月21日
「発見」を持ち帰ろう
『ハロー!ミュージアム』事後学習の試み
札幌芸術の森美術館 学芸員 佐藤弥生
札幌芸術の森美術館では市内の小学5年生を対象とした対話型鑑賞事業「ハロー!ミュージアム」を実施しています。
児童はガイド役となるボランティアとともに,「遠くで見る」「近くで見る」「色んな角度から見る」などの技を駆使しながら,作品をじっくり観察するということを体験します。その後,「はっけん!カード」を使いながら,好きな作品を選び,スケッチしながら,自分なりに気が付いたこと,思ったことを書き込んでゆきます。9年目を迎えたハロー!ミュージアムでは,見方を学ぶ・自分で観察する・発見を書き出すという流れが確立され,実施する美術館,ボランティアにとってもノウハウが蓄積され,また学校にとっても成果がわかりやすく決められた時間の中で活動ができるという利点がある一方,時間をかけて作品を見,発見した成果がほとんど他者に共有されないこと,美術館の中だけで活動が完結し,やりっぱなしになってしまうという課題がありました。

従来の「はっけん!カード」

改良型「おすすめ!展覧会紹介ポップ」の記入例。
キリトリ線などをつけレイアウトを工夫しました。
そこで,事後学習につながる試みとして,「おすすめ!展覧会紹介ポップ」を考案しました。展覧会を見たことがない人に自分の「はっけん!」を伝える欄を設け,また,各自の紹介ポップをまとめると一つの展覧会見どころマップになるよう形式を工夫しています。ハロー!ミュージアムは前年度から配布教材などを準備しているため,展覧会紹介ポップを直ちに導入することは叶いませんでしたが,運用期間中に参加した学校全5校のうち,3校からアンケート回答が得られ,うち1校では事後学習にポップを採用していただきました。



実際に使用されたポップ。
有機的な作品の形に注目を促すものや,形から想起される感情を問いかける質問など,
より踏み込んだ見方になっていることが分かります。
ポップを見てゆくと,作品をスケッチしながら記入するはっけん!カードに比べ,より端的な言葉で展覧会のみどころや作品の特徴を伝えたり,読み手に想像を促したりするものが多く,反復し,ふりかえることで作品鑑賞の体験が児童の中に根付いている様子が窺えました。また,学校が実施する事後学習では模造紙にまとめ,学級新聞のようなかたちで振り返りを行う学校が多いため,ポップ形式だとそうした既存の振り返り学習でも使いやすいという声をいただきました。試験的な導入でしたが,これまでのハロー!ミュージアムの蓄積を活かしながら,作品を「見る」「感じる」「発見する」の次の段階として,「発見を伝える・根付かせる」ということを実現できると感じました。来年はハロー!ミュージアム10周年を迎え,記念展覧会を予定していますので,連携企画としてポップを使った作品マップ等にも活用していければと考えています。

運用期間中に開催されていた展覧会の様子
(柿﨑煕《林縁から―天地のあはひ》(部分)2017年)
札幌芸術の森美術館/札幌芸術の森
(住所)〒005-0864 北海道札幌市南区芸術の森2丁目75番地
- 問合せ
- 011-591-0090
- 交通
- 地下鉄南北線「真駒内(まこまない)駅」の中央バス2番乗り場から【空沼線・滝野線】に乗車,「芸術の森入口」又は「芸術の森センター」下車(所要15分)
- 開館時間
- 9:45~17:00(6~8月は17:30まで)
※入館は閉館の30分前まで - 休館日
- 4月29日~11月3日は無休,11月4日~4月28日は月曜日,
年末年始(12月29日~1月3日)
※月曜日が祝日・振替休日の場合は翌平日
※各展覧会により異なる - ホームページ
- https://artpark.or.jp/