令和元年6月17日
「伝えるのは“いのち”」
~動物たちが教えてくれること~
旭川市旭山動物園 飼育展示係 教育活動担当 鎌上 塁
「動物園」というと,レジャー施設としての側面が注目されがちですが,動物園にはそれに加え,「自然保護・種の保存」「調査・研究」,そして,「教育」という使命・役割があります。旭川市旭山動物園では,動物園の使命の一つ「教育」を全うするため,「もぐもぐタイム」など園内でのガイドや市内小中学校への出張授業,教材の貸出しなど,様々な教育活動を実施しています。
今回はその中の一つ,動物の貸出し事業を御紹介します。
当園では約15年前から,モルモットとカイウサギの貸出し事業を実施しています(現在はモルモットの貸出しがほとんど)。旭川市内や近隣市町村の小学校に動物を貸出し,子供たちに飼育してもらう,というもので,年間15校ほどの利用があります。ほとんどの学校が生活科(小学1・2年)の授業で利用しており,貸出し期間は概ね10日~14日間です。
旭山動物園のモルモット
貸出しの事前準備として,子供たちは,モルモットを飼育するにあたり必要なことを学習します。その内容をまとめ,グループごとに発表するのですが,そこに私たち飼育員も出張授業という形で参加し,子供たちと一緒に飼育に必要なことを確認していきます。
貸出しの際に最も重要なのが,「休日のお世話はどうする?」ということです。飼育員が子供たちに「学校が休みの日は誰がモルモットのお世話をするの?」と問いかけると,最初は皆,「先生にお願いする!」と言います。しかし,「先生ではなく,みんなにモルモットを貸し出す」こと,「誰かがやってくれるだろう,という気持ちなら貸出しはしない」ことを子供たちに伝えると,必死で休日のお世話の方法を考えます。大抵は,子供たちの家で預かる,学校に来られる人が交代でお世話をする,という結論に落ち着くのですが,この結論に至るまでに30分以上かかるクラスもあります。こうして,モルモットの飼育体験がスタートします。
出張授業の様子
私たち飼育員は,子供たちが飼育作業を行う様子を見ることができません。しかし,2週間後に迎えに行ったモルモットたちを見れば,子供たちが動物としっかり向き合い,責任を持って飼育してきたことがすぐにわかります。
貸出し期間中,子供たちはモルモット中心の生活を送ります。「モルモットは大きな音が苦手だからけんかはやめよう」「今日はモルモットのおやつにどんな野菜を持って行こうかな」「名前を呼んだら鳴き声で答えてくれた!」。モルモットと一緒に毎日を過ごしていく中で,子供たちの中には「生き物を大切にする心」が確実に育っていきます。
モルモットとのお別れ会では涙を見せる子も多く,中には,最初から最後までずっと泣いている子や,クラスの半数以上が大泣きしてしまう学校も。動物との別れを惜しむ子供たちの姿を見て,子供たちは動物の飼育を通して,「命の大切さ」をしっかりと受け取っているのだと,強く感じます。
お別れ会の様子
旭山動物園では,動物園の持つ使命・役割を全うするため,「伝えるのは“いのち”の輝き」という命題を設定しています。生きた動物には,写真や映像では得られない感動や発見があります。モルモットから「命を大切にする気持ち」を受け取った子供たちが,地球環境保全,野生動物共生といった考えを持ち,いつまでも動物たちの“いのち”が輝ける未来を創り上げてくれるものと信じています。
旭川市旭山動物園
(住所)〒078-820 旭川市東旭川町倉沼
- 問合せ
- 0166-36-1104
- 交通
- 旭川駅から路線バスで40分程度 料金:440円
詳細は当園ホームページ「アクセス」を御確認ください。 - 開園時間
- 夏期開園
2019年4月27日~10月15日 9:30~17:15(入園は16:00まで)
2019年10月16日~11月3日 9:30~16:30(入園は16:00まで)
冬期開園
2019年11月11日~2020年4月27日 10:30~15:30(入園は15:00まで) - 休園日
- 2019年11月4日~11月10日,12月30日~2020年1月1日
- 入園料
- 大人(高校生以上)820円(590円),団体720円(490円),小人(中学生以下)無料
※( )内は市民特別料金
※※その他各種割引制度については当園ホームページ「入場料・券売所」を御確認ください。 - ホームページ
- https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/