2021年10月25日
博物館ならではの「海」をテーマにした学び
船の科学館 学芸員 和木美玲
日本は周囲を海に囲まれた島国であり古来より海とのかかわりが深く、近年では持続可能な社会に向けて「海の豊かさを守ろう」といった国際的な目標が掲げられています。一方で、私たちが 「海」を感じたり「海」を学ぶ機会はどこにあるでしょうか。例えば、その入り口の一つとして「博物館」があるのではないかと考えています。
船の科学館では、「海」を題材にした教育普及活動を「海洋教育」の一環として行っています。「海洋教育」とは、「海に親しむ」ことから始まり「海を知る」ことで海への関心を高め、さらに海と人との共生のため「海を利用」しながら「海を守る」ことの大切さを学び、自ら課題解決へのプロセスを考え行動に結びつくような教育を目指しています。
例えば、最近話題になっている海洋プラスチック問題をテーマに、ベイエリアにあるごみを「海ごみ予備軍」と名付けた体験学習プログラム「海ごみ予備軍回収大作戦!」では、ごみが海に入る前に回収することの大切さを知ってもらうため実際にごみ回収を行うとともに、清掃船に回航頂き実際の作業状況を解説付きで見学し、さらに海ごみの環境問題の現状について動画を交えて解説したのち、海ごみを利用した工作教室などを地域や関連団体と連携しながら実施しました。この催しに親子で参加されたお母さんから後日「子供が帰り道に落ちていたレジ袋を、ウミガメが間違って食べない様にと拾っていたのにビックリしました。その後もプラスチックごみには何かと気をつけている様子です。」と感想を頂きました。
「海」をテーマにした博物館というと海事博物館や水族館等をイメージされる方が多いと思いますが、考古や歴史、美術や音楽、自然史や理工などの分野の博物館でも「海」をテーマとした各種各様の活動ができると考えています。博物館は多種多様な資料を収集・収蔵している宝の玉手箱です。貝塚や塩田などは古来より海の恵みを受けて人が生活してきた証であり、また船による交易によって地域産業が発展し、同時に文化や芸術に伝搬した側面もあります。また、絵画や音楽の中には海を題材にした多くの作品が存在し絵画と音楽と理工がコラボすると、より立体的に「海」を感じられ、私たちと海とのかかわりを再認識する場を提供することが出来ると思います。
この様に、「海」は総合的な分野であるからこそ、地域・分野・館種にとらわれず「海」を扱った学びが生まれると言えます。あらゆるジャンルの博物館が「博物館ならでは」の視点から、海の大切さを学ぶ機会や体験の場を提供することで、多くの方々が豊かな海への気づきを持ち帰っていただけたらと思っています。
船の科学館
(住所)〒135-8587 東京都品川区東八潮3番1号
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新交通「ゆりかもめ」新橋駅(17分)豊洲駅(14分)より、「東京国際クルーズターミナル駅」下車
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都バス(「東京国際クルーズターミナル駅前」下車)
[海01]…地下鉄「門前仲町駅」より
「豊洲駅前」経由「東京テレポート駅前」行き
[波01出入]…「品川駅港南口」より
「東京テレポート駅前」行き - 開館時間
- 10:00~17:00(“宗谷”乗船は16:45まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)、年末年始(12/28~1/3)
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
- https://funenokagakukan.or.jp/