2021年12月22日
100年前の自動車から今を考える
トヨタ博物館 学芸員 藤井麻希
当館は19世紀末のガソリン自動車誕生から現代までの自動車の歴史を日米欧の代表的な車両で展示しています。そのほとんど全てのクルマが走行可能な動態保存です。その特徴をいかし、希望する学校団体にはクルマを実際に走らせ説明をする、所要時間20分ほどの特別プログラムを実施しています。説明するクルマは約100年前のクルマ、フォード モデルT(1915年・アメリカ)です。

特別プログラムは小学校向けと技術をより詳しく説明する中学校以上向けの2種ありますが、今回は小学校向けについて述べたいと思います。このプログラムは2008年から始め、説明する車両や内容を変えながら現在に至っています。説明の際は学芸スタッフだけでなく、クルマを整備しているスタッフにも参加してもらいます。プログラムを通し、当館の使命の一つでもある、自動車文化・モノづくり文化の継承をし、幅広い層にクルマに対し興味・関心をもってもらいたいと考えています。
特別プログラムで使用する、普段見なれないクルマを目の当たりにし、子供たちは、「すごい!何あれ?!」「すごっ」「えっ、乗れるの?!」などと言いながら近づいてきます。ワクワクしている様子が待っているスタッフにも伝わってきます。
プログラムでは、まず人々の生活やクルマづくりの変化について伝えます。今の私たちにとっては想像することが難しいかもしれませんが、子供たちにはクルマを持つことで、人々の生活がどのように変わり、社会がどのように変わっていったのかを考えてもらう時間を少し作ります。「遠くまで自由に移動できる」「重たいものをたくさん運ぶことができる」など子供たちから様々な意見がでます。当時の写真を見せ、今とは異なるクルマの使われ方についても話をします。

次に実際にエンジンをかけ、約100年前のクルマが走行する様子を見てもらいます。クルマが走り出すと「おおー」と歓声があがったり、自然と拍手がおこります。「くさいー」「音がうるさい」など各々感想を発しますが、必ず数名は「この匂い好き」という子もいます。

プログラムの最後には子供たちからの質問に答えます。動いたクルマを見た後の高揚感からか大人しく聞いていた子も積極的に手を挙げることが多く、時間内に全ての質問に答えられないことがしばしばあります。「タイヤがなぜ細いのか」「窓がなんで丸いのか」「ガソリンタンクがどこにあるのか」「クルマの前についているものはなに?」「いつから免許証ができたのか」「値段はいくら?」に加え「何気筒ですか?」という専門的な質問もでます。回答する際は、現代のクルマと同じ点、異なる点を交え、具体的に話すようにしています。
このプログラムを通し私たちが大切にしていることは、昔と今のクルマに興味を持ってもらうことはもちろん、その後の館内の見学、そして博物館の楽しみ方を伝えることです。またクルマの歴史とともに、現在の自動車の課題についても伝えることです。これからクルマを取り巻く環境が変化しても、クルマという素材を使い、歴史から今を考えることができるプログラムにしていきたいと考えています。
トヨタ博物館
(住所)〒480-1118 愛知県長久手市横道41-100
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- 0561-63-5151
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名古屋瀬戸道路 「長久手IC」より西へ0.4km(東名高速道路日進JCT経由)■公共交通機関をご利用の場合
リニモ(東部丘陵線)「芸大通駅(トヨタ博物館前)」で下車〔1番出口〕、徒歩約5分 - 開館時間
- 9:30~17:00 (入館受付は16:30まで)
- 休館日
- 月曜日 (祝日の場合は翌日)および年末年始
- 入場料
- 大人\1200、シルバー(65歳以上)\700、中高生\600、小学生\400
※団体割引あり・年間パスポートあり(文化館1階・3階は無料で入館できます) - ホームページ
- https://toyota-automobile-museum.jp/