2022年3月25日
「おうちと水族園をつないで生き物観察!」
葛西臨海水族園 堀田桃子
COVID-19の感染拡大に伴い、葛西臨海水族園ではこの2年間、水槽の様子のライブ配信や遠隔地と結んだオンライン講演会など、新しい手法を取り入れた教育活動に取り組んできました。今回はそれらの中で、オンラインでの体験型教育プログラムについて紹介します。
私たちが長年行ってきた教育活動の一つに、年齢(学年)別に対象を絞った子供向けの体験型プログラムがあります。「生きている生き物」を活かした楽しい学びと、子どもと自然をつなぐきっかけづくりをねらいとし、発達段階に合わせてシリーズで開催してきました。これまでフィールドや園内での生き物観察を軸に行ってきたこのプログラムを、オンラインで実施することになった際、いかに実際の体験を伴ったプログラムにするかが課題となりました。そして、いろいろと検討した結果、観察対象を参加者自身に用意してもらうことになったのです。参加者に用意してもらう観察対象も丸ごとの鮮魚の他に、丸ごとのエビ・カニ、フライドチキンの骨など、いろいろと試してみましたが、ここではもっとも実施回数が多かった、「魚」のプログラムに焦点を当てます。
おうちと水族園、それぞれ鮮魚を用意して見せ合いながら進める。
このプログラムの参加者は、事前に活魚店等で丸ごとの鮮魚を用意し、それを手元に置いてWeb会議サービスで水族園と画面越しにつながります。水族園でも鮮魚や模型、水槽での様子が分かる映像などを用意して、観察のサポートを行います。双方向的なやり取りを大切にするため、1回の参加者は10人ほどで、観察時にはWeb会議システムの機能でさらに少人数のグループに分けました。最も大切にしたのは、各家庭で用意した魚と水族園のクロマグロ、2種の魚を同じ視点でじっくりと観察すること。まずは比べる楽しさを体験してもらい、観察を通してそれぞれの体のつくりがその生き物が生きていくうえで都合よくできていることを実感できるようなプログラムにしました。
普段は団体向けプログラムなどを行う部屋を配信拠点に。
参加者は、丸ごとの魚を初めて見た、触ったという子どもから、魚博士のような子どもまで様々。実施するまでは、画面越しにコミュニケーションがうまくとれるのか等不安もありました。しかし始めてみると、ヒレを広げたり、口を広げて歯を探したり、ウロコを剥がしてみたり、皆観察に夢中です。動画を見るときは、水槽を観察するときと同じように子供の気づきに合わせて解説をしましたが、「あ!いまなんか出てきた!」「ヒレを曲がる方に出している!」という、活き活きとした声が盛んに上がり解説が追い付かないときも。自分の魚で発見するということも特別だったようで、実施後のアンケートでは魚を入手するプロセスや、プログラム後に使った魚を料理して食べることも含めて学びにつながったことが分かりました。
クロマグロの標本を様々な角度から見せる。
プログラムの回を重ねるごとに、子供たちがリラックスして参加できる、小さな兄弟がいても気軽に参加できるなど、想像していた以上のメリットがあることが分かりました。実際に水族園で生き物の姿を見てもらうことが一番ですが、今後は園内で実施するプログラムと合わせて、オンラインプログラムも継続していければと思います。
画面上が水族園で下がご家庭。各家庭で用意した魚も様々。
東京都葛西臨海水族園
〒134-8587
東京都江戸川区臨海町6-2-3
- 問合せ
- 0195-32-2652
- 交通
- ・JR:京葉線「葛西臨海公園駅」下車、徒歩5分
- ・地下鉄:東京メトロ東西線「葛西駅」「西葛西駅」下車→都バス「葛西臨海公園行き」ほか(詳細は公式ホームページ参照)
- 開館時間
- 9時30分~17時(入園および入園券・年間パスポートの販売は16時まで)
- 休館日
- 水曜日(水曜日が国民の祝日や振替休日、都民の日の場合はその翌日が休園日)年末年始(12月29日~翌年1月1日)
- 観覧料
- 一般700円、中学生250円、65歳以上350円
※小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料です。中学生は生徒手帳を持参してください。
※団体入園についての詳細は「団体利用について」をご覧ください。 - ホームページ
- https://www.tokyo-zoo.net/zoo/kasai/