2022年6月24日
ためして、動いて、活きた天文展示へ!
かわさき宙と緑の科学館(川崎市青少年科学館) 天文担当学芸員 内藤 武
かわさき宙と緑の科学館は生田緑地という公園の中にある、自然・天文・科学をテーマにした市内唯一の自然科学系登録博物館です。科学館周辺は豊かな自然に囲まれ、よく晴れた週末になるとピクニックに来る方の姿もたくさん見られます。外に広がる生田緑地の自然と一体となって、楽しく学ぶことができます。
自然豊かな立地にある科学館
科学館での私の主な仕事は、プラネタリウムの解説や投影プログラムの制作など、天文・宇宙についての事業の企画・運営です。プラネタリウムの一般投影は45分間全編生解説。毎月テーマが変わるので、内容を考えるのも、操作手順を覚えるのも一苦労・・・。ですが生解説にはそれをも吹き飛ばす良さがあります。場内の雰囲気をみて臨機応変に最新の星空情報を話題に入れたり、来館者の様子に合わせて語り口を変えたりできることです。知識の一方通行ではなく、その場にいるみんなが「一緒に星空を見上げる」ことで、対話をするように天文・宇宙を体験できるのです。
プラネタリウムは生解説・手動操作で実施
天文展示の様子
一方で、天文分野の展示は頻繁な更新が難しいため課題を感じていました。そこで、職員で話し合って「まず中身に動きをつくろう」と、ホワイトボードを使って「最新の天文情報コーナー」を作りました。館の望遠鏡で撮影した天体写真や天文現象などをリアルタイムに紹介することで展示室に変化が出せるようになりました。意識したのは、天体観察会での配布物やSNSの記事など、すでにあるコンテンツを活用することです。内容更新の負担を減らし、人と時間が限られるなかでも更新し続けることを大切にしました。また、ただ知識を並べるだけにならず、コメントを加えたり、SNSへの誘導を行うなどして来館者との交流を作り出す仕掛けを組み込みました。設置後、皆既月食など注目する天文現象があったときは特に反応が良く、親子連れの来館者からは「あ!月食だ!」「次は1年後にあるんだね」など展示を見ながら話がはずむ様子も見られました。
天文情報コーナー 2021年12月と2022年5月の内容
さらに、新コーナーの紹介も兼ねて、スタッフ向けに展示解説プチ研修会を行いました。大掛かりなものになると時間の調整だけでも大変ですので、開館時間内に、1回30分程度、同じ内容のものを数日間実施し、都合の良いタイミングで参加できるようにしました。
展示解説プチ研修会の様子
当館は施設の管理と広報に指定管理者制度を導入しており、様々な立場の職員が働いています。研修会にも受付・清掃・学芸と多様なスタッフが参加し、立場の垣根を越えて様々な声が上がってきました。
「展示は何度も見てきたけれど、一歩踏み込んだ内容を聞くだけで視点が変わることに驚きました」
「漠然としかイメージしていなかった展示だが、もっと詳しく見てみようと意欲が湧きました」
「来館者向けにも解説ツアーをやってほしいです」
ほかにも、「これなら簡単にできるかも!」というアイデアが湧いてきて、一人では答えを見つけられないようなこともみんなでワクワクしながらディスカッションすることができました。
インターネットの発達で、特に天文分野の情報はその気になれば誰でも手に入れられる時代です。地域に根差した科学館として大切なのは、来館者のみなさんとコミュニケーションをとりながら、専門分野のことを身近なものとして実感・体験してもらうことではないでしょうか。新年度になり、新しいスタッフも入ってきました。エデュケーションはまず身内から。これからも意見を出し合いながら盛り上げていきたいと考えています。
かわさき宙と緑の科学館(川崎市青少年科学館)
〒214-0032
川崎市多摩区枡形7-1-2
- 問合せ
- TEL 044-922-4731 FAX 044-934-8659
- 交通
- 小田急線「向ヶ丘遊園」駅南口から徒歩約15分
- JR南武線「登戸」駅から徒歩約25分
- 開館時間
- 火曜日~日曜日 9:30~17:00
- 休館日
- 毎週月曜日(祝祭日の場合は開館)
- 祝祭日の翌日(土日・祝日の場合は開館)
- 年末年始
- 観覧料
- 入館料無料(展示室を自由にご覧いただけます。)
プラネタリウム観覧料
一般\400, 高校生・大学生・65才以上の方\200(要証明書), 中学生以下 無料
※障がい者手帳、川崎市の福寿手帳の交付を受けている方などは、提示により無料 - ホームページ
- https://www.nature-kawasaki.jp/