2022年11月1日
ちょっと昔を子どもとつなげる
池田市立歴史民俗資料館 学芸員 宮元正博
小学3年生で学習する「昔のくらし」の単元は、3学期に設けられることが多いようです。これに合わせて日本全国の歴史民俗系博物館では、しばしば秋から冬にかけて「昔のくらし」に関する展示が開催されます。池田市立歴史民俗資料館(以下、当館)も例外ではなく、毎年冬になると「昔のくらし」に関する企画展示を開催し、池田市や近隣市にある学校からの見学をたくさん受け入れています。今回は、「昔のくらし」の展示に関する当館の取り組みについてご紹介します。
当館の「昔のくらし」の展示では、主に大正時代~平成初期ごろに使われていた、100点近い生活道具類を「ふくそうの道具」「しょくじの道具」「すまいの道具」「たのしむ道具」に分けて展示しています。キャプションの説明文は大人向けになっていて、子どもには言葉も内容も少し難しいので、簡単な言葉で説明したトレーディングカード風の「ちょっと昔のくらしの道具カード」を各資料の前に置いてあります。カードを集めると自分だけの解説ブックを作れる、というものです。


展示室の一角には、1981年(昭和56年)の居間という設定で「昔のくらし体験コーナー」を作り、黒電話や足踏み式ミシン、ラジカセなど、昔の道具をさわってみることができるようにしています。見るだけよりも興味を引きますし、実際にさわって動かしてみることで、使い方がわかるだけでなく、見るだけではわからない道具の構造について考える機会にもなっているようです。実際、「唐箕(稲を脱穀するための道具)と足踏み式ミシンって同じ仕組みで動いてるやん!」と気づく、鋭い子もいました。確かに、どちらもクランクを利用して直線運動を回転運動に変えて動かす道具です。
この「さわる」展示は、2020年度は新型コロナウィルス感染症予防のため、やむを得ず中止していましたが、2021年度は消毒液を置くなど感染対策に留意しながら行いました。


展示されている「昔の道具」の中には、1970~90年代に使われていた道具や、当時流行っていたおもちゃも多くあります。この時代の道具は、今の子どもたちにとっては十分に「昔の道具」です。展示を見た時だけではなく、家に帰って展示について話をした時に、実際にそれらを使っていたであろう両親や祖父母など、身近な人から当時のことをより具体的に聞いて学べるように、というのが表向きのねらいですが、博物館が家族のコミュニケーションのきっかけになれば...、という隠れた目論見もあります。


このような時期ですので、見学をオンラインで行った小学校もありました。オンライン見学の際には、学年の先生に当館まで来ていただき、学芸員といっしょに中継してもらうなど、なるべく教室とシームレスになるように工夫しました。あり合わせで用意した機材の調整や先生との打ち合わせなど、大変なことは多くありましたが、オンラインだと新型コロナウィルス感染症の濃厚接触者になったりして学校に来れない子どもたちも、環境が許せば授業に参加できますし、不登校の子どもが学校に来るきっかけになったという、予想もしていなかった効果もありました。このように、オンライン授業は博物館が「外」に出ていく手段としてだけではなく、学校にとっても活用の幅が広がっていくのではないかと思います。


新型コロナウィルス感染症の拡大は社会に大きな変化をもたらし、博物館もその例外ではありません。ですが、その中で培われた様ざまなノウハウは今後の基礎体力として活きてくるのではないかと思っています。
池田市立歴史民俗資料館
〒563-0029
大阪府池田市五月丘1丁目10番12号
- 問合せ
- 072-751-3019
- 交通
- 阪急宝塚線「池田」駅下車
- 北東へ徒歩約15 分
- 石橋北口方面行バス「辻ヶ池公園前」下車5 分
- *駐車場有
- 開館時間
- 水曜日~日曜日09:00~17:00(入場は閉館15分前まで)
- 休館日
- 毎週月・火曜日( ただし祝休日の場合は開館)、年末年始
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
- https://www.city.ikeda.osaka.jp/soshiki/kyoikuiinkai/rekishi/index.html