2024年7月25日
全国初!ネットを中心に活動する登録博物館
大網白里市教育委員会 副主査・学芸員 武田剛朗
千葉県大網白里市には、市内の歴史・考古・民俗・美術の資料が多く残っていますが、常設の展示施設となる博物館、資料館、美術館などがなく、継承されてきた貴重な資料を見ていただくことができませんでした。このまま死蔵しておくのはもったいない。そこで、平成30年(2018)2月に「館を持たない自治体が提案する本格的デジタル博物館」をコンセプトとして、大網白里デジタル博物館をインターネット上に開館しました。「本格的」と謳うように、企画当初から「収集」、「保存」、「調査・研究」、「展示」の博物館の基本機能を軸とした活動を進めています。
デジタル博物館のトップページ
大網白里市デジタル博物館には、「美術館」、「博物館」、「資料室」、「大網白里市を知る」の4つの展示室があります。「美術館」では、大網白里市ゆかりの芸術家3名の作品を解説付きで閲覧できるようにしています。「博物館」では、時代別に資料を見るページとテーマ別に資料を見るページがあります。「資料室」では、『大網白里町史』などの過去の刊行物、大正~平成の地図、動画などがまとめられています。「大網白里市を知る」のページには、沿革や年表などの市の現況を知ることができます。
美術館のページ
また、「博物館」の中の「歴史展示室」には、大網山田台遺跡群などの本市を代表する遺跡の発掘調査から出土した石器や土器の一部を3Dデータ化して公開しています。通常の実物展示では見ることが難しい資料の底部や土器等の内部をいろいろな角度で詳細に見ることができ、土器の形状や文様などを立体的に知ることができます。
➡ 縄文土器の3D
縄文土器の3Dのイメージ
また、「資料室」の中の『大網白里町史』のページにおいては、検索機能が充実しています。「目次から見る」、「キーワード検索」、「年表」などがあり、それぞれの目的で検索をすることができるため、目当てのページをすぐに見つけることができ、学習利用などの際に便利に使うことができます。
『大網白里町史』の検索ページ
大網白里市デジタル博物館は、多くの方に本市のことを知っていただくことや学校教育で使用していただくことを目指して活動しています。そこで、公式SNSとしてX(旧Twitter)を運用するほか、YouTubeに機能やコンテンツを紹介する動画を公開しています。
また、小学校の社会科などの授業で使っていただくことを目的として、イメージしやすいイラストと教科書に沿った解説付きのページである「子ども考古学教室」をクラウドファンディングによる寄付金を活用して作成、公開しています。ここで公開するイラストや写真等は、教育目的であれば、許可なく使うことを可能としています。実際に授業で使用した児童からは、「自分の住んでいる地域に遺跡があるなんて知らなかった。」、「本物の土器をもっと見たくなった。」などの感想が聞かれました。
以上のような活動を続けていく中で、令和5年(2023)4月の改正博物館法の施行を機に、条例・規則の制定、職員(館長・学芸員・その他職員)の配置、収蔵施設の整備、問合せ等の対応方法などを整え、令和6年(2024)3月に登録博物館となることができました。
これは、常設の展示施設を持たず、インターネットを中心に資料を公開している機関としては、全国初の事例です。
登録博物館となったことで、市・教育委員会のなかでの位置付けが明確となり、市内外の方々からの注目度も上がっています。ネットを中心に活動する博物館を謳っていますが、今後も博物館活動の本質は何かを見定めて、庁舎内の空きスペースなどに実物資料の展示を検討します。そして、最終的には常設的に実物展示ができる博物館の設置を目標として、デジタルと実物展示を融合した新しい形の博物館を目指していきます。
大網白里市デジタル博物館
(住所)〒299-3292
千葉県大網白里市大網115番地2
- 問合せ
- 0475-70-0380
- 開館時間
- 24時間 ※ただし、サーバーメンテナンス等を除く
- 休館日
- なし
- 観覧料
- 無料
- ホームページ