2024年8月27日
地域の文化施設を支える!高知城歴史博物館の“地域連携”
高知県立高知城歴史博物館 主任調査員 岡本 麻衣
平成29年(2017年)3月、高知城のふもとに高知県立高知城歴史博物館(以下、「城博」という。)が開館しました。城博では、前身である土佐山内家宝物資料館の時代から地域連携に力を入れ、開館後はその体制をさらに拡充してきました。その中でも、特異な連携の一つとして「施設支援」事業があり、市町村文化施設への支援・協力に積極的に取り組んでいます。

高知県立高知城歴史博物館の外観
◆支援制度の始まりと「地域歴史文化調査支援室」の設置
「施設支援」事業のきっかけとなったのが、高知県が平成29年(2017年)度から2ヵ年にわたり開催した県内文化施設連携企画「志国高知 幕末維新博」です。この博覧会は、県内23の歴史系文化施設が参加するという、今までにない大規模な企画でした。その一方で、市町村文化施設では、人的・予算的な課題を抱えており、博覧会成功のためには、こうした施設への支援が必要でした。これに対し、県は支援制度を設け、期限付き支援員2名を城博に配置しました。ここから施設支援が始まります。
この支援制度には多くの相談が寄せられ、博覧会終了後は、観光・文化の各分野から、「地域の歴史文化活動のさらなる充実や歴史観光の推進のためには、支援体制の継続が必要である」との声が上がりました。こうした声を受け、令和元年(2019年)度に県の委託事業として、「地域歴史文化調査支援室」が城博に設置されました。
そして、令和3年(2021年)度より、城博の本体事業である地域連携と合流し、地域企画課として活動を続けています。
◆市町村文化施設への支援・協力とその成果
①相談窓口の開設
資料整理・保存、調査、展示・解説など、文化施設からの様々な相談や質問に対応しています。寄せられた相談に対しては、可能な限り現地に行って一緒に解決し、民俗や考古など専門外の内容には専門員を紹介するなど、解決への道を共に探るよう心がけています。
②所蔵資料目録編成への協力
市町村文化施設には、地元から集まった膨大な資料が蓄積されていますが、整理が追いついていないのが現状です。そのような中で資料情報を公開するためには、先ず資料群毎の内容を把握・整理し、分類・編成する必要があります。城博は、そのための資料調査やデータ化といった基礎作業に協力しています。これまでに、四万十市郷土博物館や中岡慎太郎館などの目録が公開され、その目録が各文化施設の調査や展示に活用されています。

現地職員と意見交換しながら、資料調査やデータ化作業を進める様子
③高知に関する文献情報の集約と提供
各文化施設における資料調査や研究、展示やレファレンス対応にあたっては、過去に蓄積された研究情報を一括して検索できることが重要です。そのため、城博では明治元年(1868年)~平成30年(2018年)までの高知に関する歴史・考古・民俗の文献情報をデータベースで公開し、令和元年(2019年)度以降の情報は隔年毎にまとめて目録として刊行しています。地元の郷土史研究者の方からは、「目録に取り上げられ、研究の励みになる」といった予想外の反響もありました。

『高知に関する研究・文献目録(歴史・考古・民俗)』
④資料情報の共有化と公開
例えば、展示に必要な資料情報を探そうとしたとき、各文化施設や図書館などの組織単位で個別に情報を収集し探すのは時間がかかり、結局「情報が見つからない」・「情報の抜けがある」といったこともよくあります。そこで、城博では「ここを検索したらみつかる」そんなシステムを目指して、点在する資料情報を一元管理できる情報共有システム構築の検討を始めています。
⑤「地域学芸員」養成講座の実施
市町村文化施設では、施設活動をお手伝いする人材として、ボランティアやガイドを導入し、様々な工夫を行っていますが、城博では、より踏み込んだ活動協力が可能な人材の育成を目的に、「地域学芸員」養成講座を開催しています。学芸員が日頃行っている「保存」「取扱」「調査」といった、基礎的な内容を座学と実習で学ぶ全10回の講座です。受講後は、学んだ知識や技術を活かして、資料調査や展示のお手伝いをするなど、それぞれの地域で成果が生まれています。また、さらに深まった協力ができるよう、昨年度からはスキルアップ講座も開催しています。

「地域学芸員」養成講座で調査カードの
採録方法を学ぶ様子

神社資料調査で資料整理やクリーニング
をお手伝い
◆おわりに
高知県には、多彩な文化施設が存在します。規模の大小・運営の形態・取り扱う分野の違いなど多種多様で、各文化施設が抱える課題も様々です。その中で、城博に地域連携を重視した一課が設置され、施設支援に特化した事業を展開してきたことは、一つの試みでもあります。今後も、我々に何ができるのか、模索の日々が続きます。
高知県立高知城歴史博物館
(住所)〒780-0842
高知県高知市追手筋2-7-5
- 問合せ
- 088-871-1600
- 交通
- ●お車をご利用のお客さま・・・高知自動車道高知ICから約15分
●JRをご利用のお客さま・・・JR高知駅からとさでん交通路面電車で「はりまや橋」にて乗り換え後、
「高知城前」下車、徒歩約2分
●飛行機をご利用のお客さま・・・高知龍馬空港⇒高知駅連絡バス
(はりまや橋下車/はりまや橋から路面電車がご利用いただけます) - 開館時間
- 9:00〜18:00(日曜日は8:00~18:00)
- 休館日
- 12月26日〜12月31日
- 観覧料
- ●企画展開催期間中・・・700円(560円)、その他の期間・・・500円(400円)
※( )内は団体20名以上の料金
●観覧無料の方・・・高校生以下、高知県・高知市長寿手帳をお持ちの方、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳をお持ちの方と介護者1名 - ホームページ